※上鳴君がちょっとだけ性格悪い



「苗字ー、今日カラオケ行かね?」
「えっ、」
「なんか予定あるか?」
「ううん!ない!なんもないよ!!!」
「そっか、じゃあ決まりだな!」

眩しい。あぁ、眩しすぎて目が開けられない。
今朝は上鳴君から挨拶をしてくれた。嬉しさのあまり声は裏返ったけど、それでもいいんだ。話しかけてもらえたことが大事である。
ただでさえ挨拶を交わせた今日はラッキーなのに2回もお話できるなんて!しかも咄嗟にOK返事したけれど、放課後デートのお誘いまで頂いた。前世で私は一体どれ程の徳を積んだのか。

明日、私の頭上ピンポイントに隕石が落ちて理不尽に私だけ死んだとしても神様にお礼を言いながら死ねるだろう。それくらい今の私は浮かれていた。

「楽しみにしてるね」
「おう!俺も初めて行くからなんかワクワクすんな!」

か、上鳴君も楽しみなんだ・・・!
顔に熱が集まるのを感じながら私は心の中で空の彼方にいる神様に拝んだ。
スキップしたくなる衝動を抑えながら、度々相談に乗ってもらっている切島君にこの嬉しさを報告するしたくて彼の席に向かうと、どうやら私の想い人が先着だった。

「切島!お前も来るか?」
「あー?なにが?」
「カラオケ!今日クラスのやつで行こうって話あがってんだよ」

「・・・・・・え?」

ガツーン。まさに頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けた。比喩ではない。このショックは最早物理的に殴られたよりも鈍い音がしたような気がした。
切島君に声をかけようとにこやかな笑顔を浮かべていた私が、いきなり立ち止まり青ざめているとそれに気づいた上鳴君が驚いた声を上げた。

「苗字?!どうした?顔真っ青だぞ!」
「いや、なんでもない・・・」
「具合悪いのか?」
「・・・ちょっと御手洗行ってくる」

上鳴君が大丈夫なのか?と声をかけてくれているのにそれを無視して教室から逃げてしまった。あーあ、折角話しかけてもらえて心配までしてくれてたのに無視しちゃった。嫌われたかな。
ついさっきまで幸せ絶頂期だったのに、ものの1分で気分はどん底である。そもそもデートだと勘違いした私が悪いんだけど。言ってくれても良いような気もするが、彼は悪気があるわけではないだろう。
やっぱり上鳴くんとお近づきになれる日は遠いな・・・。はあ、とため息を吐きながら1人で女子トイレへと続く廊下を歩いていた。






「お前もあんまり苗字のこと苛めんなよ」
「苛めてるわけじゃねーよ」
「苗字は傷ついた顔してたぞ」
「でもよ、俺に話しかけられてあんなに嬉しそうにしてさ。可愛いって思っちゃうじゃん」
「そう思うなら普通に誘ってやれよ」
「好きな子ほど苛めたくなるのが男の性だろ?」
「お前本当に性格悪いな・・・」


切島はひとり、性格が歪んでいる友人とその友人に恋するクラスメイトをどうくっつけるか悩んでいた。
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