「おい」
「・・・・・・」
「てめえシカトしてんじゃねえ!殺すぞ!」
「え?私に言ってるの・・・?」
「お前以外に誰がいんだよ!ちったあ考えろ!!」
「ご、ごめん」

いきなりの罵倒を浴びせてきた男はクラスメイトであり、1年A組の問題児であり、私に最近突っかかってくる人物、爆豪勝己である。彼は基本的に他人に対して思いやりがなければ口も悪い。気に食わないことがあると手もすぐに出る。私も例外なく爆豪に数々の仕打ちを受けてきた被害者である。

例えば雨の日に私が傘を忘れて下駄箱で待ちぼうけになっているといきなり爆豪が私に自身の傘を投げ付けてきた。幸い、私はこの時に避けたが当の本人は何の言葉も発することなくイライラした様子でずぶ濡れになりながら帰宅していた。爆豪のストレス発散のために危うく怪我をするところだった。
違う日には私が演習の時に足を捻ってしまい、リカバリーガールで治してもらうにもそこまで歩いていけないと行った時に肩を貸すと率先して言ってくれた切島くんにいきなり爆破を浴びせていた。私が嫌われているばっかりに切島君にも迷惑を掛けてしまい、大変申し訳なかった。切島君は気にするな、と言ってくれたがこれで切島君が私によそよそしくなったら爆豪のせいだとしばらく恨んだ。

そんなこんなで私と爆豪の確執は深まるばかりであった。

「明日の放課後開けておけ」
「な、なんですか」
「次の英語のテスト内容教えろ」
「それなら今・・・」
「明日っつってんだろ!5時に図書室来い」

これが教わる人の態度だろうか?普通に今は休み時間だしみんな見てるからこんな決闘みたいな申し込み目立って仕方ないし迷惑もいいところだ。そんなに私嫌われてるの?

「ちょっと待って明日は、」
「あぁ゛?」
「いやなんでもないです」
「チッ」

適当な理由付けて断ろうとしたが爆豪の目が怖すぎて断れなかった。あの顔を見て断れる人がいたならその人はよほど勇敢か無謀な人だろう。爆豪はまたイライラした様子で大きな音を立てながら扉を開けて何処かへ出て行ってしまった。
明日のことを考えるだけで憂鬱な私とは対象的に何やら気分良さげな切島君と上鳴君が声を掛けてきた。

「苗字相変わらず大変だなー」
「バクゴーもいい加減大人になれって感じだけどよ」

けたけた笑いながら、それはまあ楽しそうに私を馬鹿にしてくるもんだからさすがにへこんでしまう。可哀想だと思うなら助けて欲しい。爆豪を止められるのは切島君だけだと言うのに。

「もう本当に私可哀想だよ、何したって言うんだろ」
「バクゴーのこと嫌いなのか?」
「嫌いもなにも嫌われてる相手のことなんか好きになるわけないでしょ?」

ドMじゃないんだから、と付け加えると2人は氷付いたように文字通りピシッと固まった。
え、嘘。私はドSに見えてたの?それとも普通に引かれた?
2人のいきなりの反応が怖くてわたしも顔を引き攣らせたまま何も言い返せないでいると切島君が意を決した様子で口を開いた。

「お前それ本気で言ってんのか?バクゴーが苗字のこと嫌いって・・・」
「え?そりゃそうでしょ」

わたしが反論したら2人はさすがに爆豪に同情するぜ、前途多難だな・・・なんてひそひそしてるからムカついてきた。

「ちょっと2人とも感じ悪いよ」
「いやー、わりぃわりぃ」
「でもよーく爆豪の行動考えてみ?」

悪そびれた様子もなくヘラヘラ笑いながら謝る上鳴君と何故か神妙な顔つきになった切島君。

思い返せば雨の日に傘を投げられたのも困っていたわたしに傘を貸してくれただけかも知れない。切島君を爆発させたのも切島君が友達だからそれくらい自分で行け、という友達想い故の行動かも知れない。
今日もその完璧主義たる性格からのお誘いだったんだ。

「案外悪いヤツじゃないかも・・・」
「なんか苗字、違う方向に考えてね・・・?」
「まあまあの進歩だろ」

二人の言葉を聞き流しながら明日の放課後を少し楽しみにしていたりする。
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