02.5 [ 1/2 ]
容姿オッケー
運動オッケー
勉強もまぁオッケー
けど…つまんねーなー。スポーツは好き…だけどやったらすぐできちゃうし、しばらくやったら相手がいなくなるんだよなー…。誰でもいいからオレを燃えさせてください。手も足も出ないくらいすごい奴とかいないかなーいんだろどっかーてか出てこいや!
なーんて…あれ。あそこでジュース飲んでるのって確か昨年クラス一緒だった…
「桐原サン?」
「あ、黄瀬くんだ」
桐原サンは変わってる。教室で数日に二言三言会話をする程度しか知らないけど、俺が目の前で笑いかけても、優しく語りかけてもファンの子のような反応を見せなかった。話す内容は「休憩毎に告白とか大変だね」とか「部活やんないの?」とか「毎日楽しい?」とかそんな感じ。決まって「彼女は?」「いつからモデルしてるの?」「雑誌の写真カッコ良かった」なんて話しかしたことなかったから、新鮮だった。最初はそういう作戦か?とか他の女と違いますアピールのつもり?とか思ったけど、一向に馴れ馴れしくしてくる素振りも告白してきそうな雰囲気もないまま、結局進級した。終業式以来の再会に、何故か心が跳ねる。…なんでだろ。別に会いたかったわけでもなんでもなかったのに、少しだけ嬉しがっている自分がいた。そんな感情はどこかへ押しやって、いつも周りにするように笑顔を張り付けて会話をしていたら、桐原サンはとんでもないことを言い出した。
「私の前でその態度やめて」
「は?」
「…ずっと作ってるの、しんどくない?」
「な、に言ってんの…俺、作ってなんかないッスよ〜」
「何を、かは言ってないのに分かったんだね」
「…!」
こいつ…そんな事考えながら俺と喋ってたのか。…やられたな。今まで近づいて来なかったのはこれをネタにいつでも俺を脅せるから、ってわけね。
「ごめん、ちょっといじわるだったね」
「別に?でも…上手いことやってたつもりだったんだけどな〜。それで、何が望み?」
「…はい?」
「お金?」
「あの、ちょっと待って」
「それとも、付き合って、とか?」
意味が分からないと首をかしげ否定しようとしようとした腕を取り胸に引き寄せ、顎を掴み上を向かせてやると少し頬を染めた。
ほーら、これでオチた。
「…お金なんていらないし、付き合ってとか思ったこともない…」
「え?」
え、聞き違い?この女今俺と付き合うの考えたことないとか言った…?
その後の展開は、俺の予想の遥斜め上をいくものだった。
02.5:出会いは春