02.7 [ 2/3 ]


「二人って…付き合ってる?」


昼休みの屋上で、桐原さんと青峰っち三人で過ごして、思ったことだ。否定されたけどどう考えても…


「二人の会話とか行動とか完全に恋人のそれッスよ!?」


これで付き合ってないとか、この人達大丈夫なのか…?


「ま、付き合ってないんならいいんすけど…」


自分の言葉に弁当を食べようと伸ばした箸を止めた。俺、安心した?二人が恋人じゃないって知ってホッとするなんてまるで…

いやいやいやいやないないないないないない!!!

だって…特別可愛いわけでもないし、俺の事好きなわけでもないみたいだし、そりゃ今までの女の子とかなり違うところとか人のことよく見てるところとか裏表ないところとか俺にバスケやるきっかけくれたこととか青峰っちにも尊敬されてるところとか…っていつの間にいいところの話に!?

まっさかー…ハハハ…

妙に説得力のある桐原サンのアドバイスを聞いている間も気持ちはふわふわと宙を漂っていた。自分の気持ちを否定すればするほど、どんどん信じたくない方に追い込まれていく。


「黄瀬くんなんて他人のスタイルをコピーして再現してるわけだし、要注意だよ!」
「あぁ、うん」
「…ちゃんと聞いてた?」
「もちろん聞いてたけど、なんでそこまで出来るのに何の部活にも関わってないんスか」
「それは俺も何回もぶふっ」
「まぁまぁいいじゃないかー。こうしてたまに君たちとお話しできれば私は満足なのさ」
「もったいないっス…」
「そう思うだろだからがはっ」
「お前ほんともう黙ってろ」


あ、桐原サンの玉子焼き。無理矢理口に突っ込まれた青峰っちがモグモグと食べてるのが羨ましい。詳しく話を聞きたかったけど、桐原サンは聞かれたくなかったようなので、深くは追求しなかった。


「あの…俺桐原さんには感謝してるんッス」
「え、私なんかしたっけ」


予鈴を聞いて帰った青峰っちに続いて教室に戻ろうとした桐原サンを呼び止めた。


「つまらなかった日々が今は楽しくてしょうがないんス。そのきっかけをくれたから」
「それなら大輝に言ってあげて。あいつが今までたくさん頑張ったから今の黄瀬くんに繋がってる。
何よりそう考えられるようになったのは、黄瀬くん自身が変わったから。だから黄瀬くん自身のおかげなんだよ、私にはいいから自分で自分を褒めてあげて下さい」

ダメだわ、もう否定の言葉が出てこない。

自分の中で、答えが出た。


「…あ゛ーーーもう!!」
「!?」
「されることはあってもしたことなかったのになー」
「なに、どしたの?」


気づいてしまったら、もう止められない。うつむく俺を覗き込む桐原サンがいつもより可愛く見えた。


「好きだ」
「…え?」
「もしいつか…いつか俺が青峰っちを倒せたら付き合って欲しい」
「付き合うって…え、え!?」
「いや、もしじゃなくて絶対!絶対倒すんで、それまでに心の準備しといて下さいッス」
「え、あの…私は」


まだ理解しきれてない桐原サンを余所に俺はツラツラと言葉を並べる。なんでこんな可愛く感じるんだと思ってただけなのに、俺はいつの間にか桐原サンを引き寄せて頬に唇をあてていた。そんな自分の行動に自分で驚く。


「な、なななな…!」
「いいッスねその反応。次する時は都遥っちからここによろしくッス!」
「都遥っち!?てか、待っ」


ここ、と自分の唇にトントンと人差し指をあて、お弁当箱を掴んで小走りで重い扉を開けた。

階段を掛け降りて廊下を走る、走る。でも途中で段々と速度を落として、仕舞いには立ち止まって壁を背にズルズルと座り込んだ。


気づかない内に授業が始まっていたのか、校内はしんとして人の気配が全くなかった。

2年のクラスが並ぶ棟までにはまだ距離がある、


「誰にも見せらんねぇよ…こんな顔…」


体育座りをして膝の間に真っ赤になった顔を挟んで項垂れる。自分がやった事を思い出して更に赤くなった。


「あああああてか何やってんだよ俺ぇぇぇ…気づいてから告白まで早すぎでしょ、それにしてもほっぺにちゅーとか小学生か!一番の問題は…」


赤い顔が今度は一気に真っ青になり引きつる。


「青峰っちを倒すまでとか何自分からおあずけくらわせてんだああああああ!!」


頭を抱えて叫んだが、ぼわーんと鈍く反響して虚しさが増した。


「くそー…すぐに強くなって抜いてやる…」



→あとがき
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