赤司 [ 2/4 ]


「き、着替え…ですか」
「早く」
「はいいいいい!」


連れていかれたのは共同の大浴場の脱衣場で、まだ夕方なのもあって使用者はいなかったけどさすがに緊張する。肩をすぼめて床を見つめていると布の擦れる音が耳に入って、赤司くんが制服を脱ぎ始めたのが分かった。黙っていると鍵を差し出され「僕の部屋の鍵だ。今すぐ着替えを取ってこい」とのご命令。顔をあげると上半身裸の首まで真っ白な人が真顔でこちらに腕を伸ばしていた。


「ぶふっ」
「…あ゙?」
「あ、いやすいません」


だってこの状況で笑うなって方が難しいでしょ。いっっっつも偉そうにして、負けたことがないとか言っちゃうような人がだよ?バカな殿様みたいな顔して真顔でこっち見てんのよ?しかも無駄にいい体してるのが余計にツボを刺激してくるわけですよ。私は自分で手の甲の皮を捻って笑いをこらえ、鍵を受け取り脱衣場から一目散に逃げ出した。


「こっちかな?」
「げ、名!」
「あーーーっ!小太郎先輩!!」


女子寮の記憶を元に部屋を探していると、廊下でばったり小太郎先輩に出会った。後ろには玲央先輩と永吉先輩も一緒だ。小太郎先輩はあわわと目を泳がせたのち永吉先輩の後ろにぴょいっと隠れた。太い腕から大きな目が控えめに覗いてるのが可愛くてきゅんとしたとか絶対言ってやらん!


「先輩酷いじゃないですか自分だけ逃げるなんて!なんで私も連れてってくれなかったんですか!?」
「名ちゃん逃げる気満々だったのね…」
「当たり前です!」
「だって…赤司怖かったんだもん」
「私だって怖かったですよ!現在進行形で怖い…!全裸で町内一周とか言われたらどうしよう」
「征ちゃんがそんな罰下すわけないでしょ」


肩を抱きガタガタと震え上がる私に玲央先輩がそう言って「アンタじゃないんだから」と続けた。私でも下しませんよ!そんな話をしている内に小太郎先輩が鍵に気づいて、事の顛末を話す。そこで“早く”と念押されていたのを思い出し青ざめた。こんな所で悠長に談笑している場合じゃない…!部屋の場所を聞いて先輩方と別れ、廊下を駆け抜ける。

たどり着いた部屋は必要最低限の家具のみで整然としていて、ストイックな彼の生きざまが表れている気がした。ベッドの端にはしわ一つなく折り畳まれたジャージが置かれていて、あまりの几帳面さにちょっと引いたのはここだけの秘密です。何にせよ急がなければ!私はジャージを抱えて脱衣場へと走った。
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