今すぐ君を抱きしめたい [ 1/2 ]


新幹線なら東京−京都間なんてびゅっと行けちゃう距離かもしれないけど、私達のようなまだ高1の学生には簡単に会いに行けない距離だ。

プルルルルルルル


「あ、赤司くんだ」


だから基本的に手っ取り早く私達を繋ぐ手段はこの電話だけだった。


「もしもし」
『名、今大丈夫か?』
「うん!どう?京都は、だいぶ慣れた?」
『そうだね…まだ道がややこしくて間違えそうになることもあるけど』
「そっかー今度遊びに行くから案内してね」
『分かった。楽しめそうなところを探しておくよ』
「やったー!」


中学が同じ帝光で、バスケ部のキャプテンだった赤司くんとマネージャーだった私が付き合い始めたのは3年の春頃。


「京都の洛山高校に行く」


と告げられた時は何を言ってるのか理解するのにだいぶ時間がかかったのを覚えている。

私は黒子君と同じ誠凛高校に通う事を決め、今日入学式を済ませた。


『そっちはどうだ』
「もう勧誘がスゴくてさ…全然進めなくて、でもその中で黒子君だけ誰にも気付かれずに本読みながらスイスイ進むの。それ見てるとなんだか面白くなっちゃてさー。そのまま黒子君について行って一緒にバスケ部に申請出して来ちゃった。もちろん私はマネ希望だけど」
『………』
「赤司君?もしもーし」
『聞こえてるよ』
「どうしたの?急に黙って」


赤司君は更に少し黙って、私は言葉を待ちながら薄いノイズを聞いていた。


『名と同じ学校に行きたかった』
「えー自分から離れていったクセによく言うよー」
『テツヤが羨ましいよ』
「…なんか今日はえらく甘えたさんだね。何?皆と離れちゃったから寂しいの?」


茶化して言った言葉に「そんなことはない」又は「ふざけるな」とか、そういう返答がくると思っていたのだが、やっぱり今日の赤司君はおかしい。


『そうかもしれないな』


だなんて。


「ほんとどうしたの?なんか嫌な事でもあった?」
『…そういう訳じゃない。これまで毎日のように会ってたのに急に電話やメールだけになって、単純に名の顔が直接見たくなった』
「!」


今まで、甘えさせてくれることは多々あったけど、甘えることなんてなかったあの赤司君が、自分でこんなこと言うなんて。


「私も、赤司君と同じだよ」
『…今すぐ会いたいな。それから』










『今すぐ君を抱きしめたい』


(GWには遊びに行くから)
(じゃあ会えるまで半月ちょっとか)
(あっという間だよ)
(…そのまま京都に住まない?)
(住まない)
(…)
((可愛いなちくしょー))



→あとがき
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