君の忘れられない男になってやる [ 2/3 ]


「それは、恋、じゃないですか?」
「こ、ここっこいいい!?」
「はい、だって四六時中赤司くんのことを考えてしまうんでしょ」


“それは紛れもなく恋ですよ”

図書室で、本について討論し隊(勝手に命名)隊員No.2の彼は、目の前にいる私を見もせず、本をぱらりと捲り活字に夢中だ。


私は机に両腕をつき乗り出していた身を引いて、ぼすんと椅子に落ちるように座った。


「ど、どうしよ…私恋なんてしたことないからどうしたらいいか分かんない…」
「告白したらどうですか?」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理絶対無理!!!」
「じゃあ赤司くんが名さんを好きになって告白してくるのを待つしかないですね」
「ふぇっ!?赤司くんが!?私を!?」
「それ以外どうしようもありません」
「マジですか」
「マジです」
「…………そうか、恋か…よし」


私の長所は、思い立ったらすぐ行動。早速私は、赤司くんを好きにさせちゃうぞ大作戦を決行することにした。

作戦その1。
「一緒に食べない?」
豪華で美味しいお弁当を用意して女子力をアピール!


「あ、赤司くんのお弁当…いつも重箱なの?」
「そうだが」


自分の貧相な弁当より千倍は美味しそうな重箱弁当に撃沈。

作戦その2。
「一緒に勉強しない?」
私が赤司くんに優しく勉強を教えて秀才アピール!


「え、えっと…?」
「これはまだ授業ではやっていないが分かるのか?」


分かりません!!言うまでもなく撃沈。

作戦その3。
「一緒に運動しない?」
ロードワークに参加させてもらってスポーツ万能アピール!


「っは…はぁっ…うっ」
「始めたばかりだが休憩するか?」


撃沈。

赤司くん…アンタ化け物か…

自分の良さをアピールするどころか、全て裏目に出ている気しかしない。なんだよあの完璧超人ふざけんな。


「名さん、今日の図書室でのお話どうしますか?」
「ごめん、パス」
「…分かりました」


ぐでんと四肢を力を抜き机に突っ伏す私を置いてNo.2コードネームシャドウ(勝手に命名)は教室を出ていった。


「ちぇっ、なんだよチクショー。こんなにへばってるんだから、同じ隊の仲間としてちょっとは気にかけてくれたっていいのに」


不貞腐れ呟いた私の言葉は周りの喧騒にかき消されて消えた。ガラリ、図書室のドアが開く。開けた本人はツカツカと歩いて、唯一図書室を使っていた生徒の正面に座る。


「…どうも」
「やぁ、名は一緒じゃないのか?」
「今日はパスだそうです」
「そうか」


暫く沈黙が続いて、本を捲る音だけが図書室に静かに響いた。それを破ったのは本を読んでいた生徒。


「名さん、げっそりしてましたよ」
「何故だろうな?」
「白々しい言い方はやめて下さい。僕を使って名さんの情報を聞き出して、更に好きだと自覚させ、あげく楽しかった僕たちの時間を奪ったんです」


パタンと本を閉じ、それまで本に向けていた視線を赤司に向けた。


「責任、取ってもらいますよ」


今にも噛みつきそうな鋭い視線にも赤司は動じず、余裕綽々の笑みで視線を返す。


「珍しく怒っているな、いや…名に辛い思いをさせるなという慈悲か…」
「どちらでもいいです。早く告白するなりさせるなりして終わらせて下さい。これ以上落ち込んでいく名さんは見てられません、では」


荒っぽく席を立ち、本を脇に抱え生徒は図書室を出ていった。


「もうちょっと名の空回る姿を見てても面白かったんだが…」


ここ最近の名の行動を思い出し、クスクスと笑う。


「仕方がない、一目惚れに気づいた事と協力させた事に免じて、早めに収集をつけることにしよう」


赤司も席を立ち、名のいる教室へと向かった。


「…ろ。…名、起きろ」
「む…?」
「こんなところで寝ていたら風邪を引くぞ」
「赤司くん!?あれ、私、もしかしてあのまま寝てた?」
「あのままがどのままか知らないがヨダレを垂らして気持ち良さそうに寝てたぞ」
「ヨ…!?」
「冗談だ」
「くっ…!」


ババッと口元を袖でぬぐった私を赤司くんは鼻で笑って、前の席の椅子に座った。


「最近ちゃんと寝てなかったからなー」
「どうしてだ」
「次なる作戦を考えてたら…ハッ!いやなんでもない、今のなし!全然なし!20世紀なし!」
「…………」
「うわああああこれもなし!!」


最悪だ…。
某真っ白に燃え尽きたボクサーのように膝に手を置いた。


「残念だが、その作戦はいくら実行しても意味はないと思うが」
「え…」
「自分を好きな男に好きにさせるための作戦をするだなんて馬鹿げていると思わないか」


赤司くんの言ってる意味が分からず、顔をあげたまま固まる。

「っは…!?う、ぇ、…は!?」
「ところで、名はどれくらい好きなんだ?」
「え、あ…赤司くんを?そりゃもう…音楽聞いたりシャンプーしてても忘れられないくらい…」


フッと笑った赤司くんは、満足そうに腕を組み、ふんぞり返って私を見下ろした。


「作戦成功だな」
「んんんんん!?作戦!?」
「名風に言うと…」










「君の忘れられない男になってやる」


(…大作戦、だな)
(赤司くん)
(なんだ)
(ネーミングセンスやばいよ)
(お前にだけは言われたくない)
(うっ…ずびばぜん)



→あとがき
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