永遠に君だけを愛す [ 1/2 ]


「結婚したいなー」
「何なのだよ、急に」


真太郎の久しぶりのオフに合わせて、二人で街へ出掛けた。流れで入ったファミレスで口数の少ない彼は私との雑談もそこそこに、バスケの雑誌を広げ読み出した。彼女が目の前にいるのにどういう了見だコノヤロー。と思ったが、そんな彼が好きだと言えるくらいには私もバカなので、黙って雑誌に目線をやった。しばらく眺めていたが、専門用語も多くてよく分かんないし、ここからじゃ文字反対で読めないし。はぁ、と真太郎には聞こえない程度にため息をついて、大きな店の窓から外を見た。男の子がてててっと走って、ガラス腰に私の目の前で転けた。お母さんらしき人が慌てて追いかけてきて男の子を起こす。わんわん泣き始めた男の子にお母さんが困惑していると、男の人が現れた、お父さんだろう。男の子の目に自分の服の袖をあて少し強引に脱ぐって、男の子を抱えあげた。そのまま自分の頭を跨がせ肩に座らせて、肩車をした。とたん、男の子は泣き止んでニカッと笑う。三人は歩き出し、やがて人混みに消えた。


「家族って暖かいよね」
「お前の話はいつも唐突だ」
「この前私誕生日だったじゃん」
「…今度はなんだ」
「16歳になりました」
「そうだな」


真太郎は話の芯が掴めず怪訝な表情を浮かべ、クイッと眼鏡を持ち上げた。


「結婚、出来るんだよねー」
「…そうだな」


外に目線を向けたままだった私にもなんとなく真太郎が私を見つめているのは雰囲気で伝わった。


「私、結婚したら暖かい家庭を作りたいんだ。旦那さんと毎日いってらっしゃいとおかえりなさいのちゅーするラブラブ夫婦で、週末にはこども連れて遊園地とかピクニック行くの!」
「まだ気が早いんじゃないのか」
「お父さんか」
「誰がだ!」


バタンと怒りに任せ乱暴に雑誌を閉じた真太郎はそれをカバンにしまい、代わりに小さな包みを机に置いた。


「何これ」
「ず、ずっと練習で会えていなかったから渡し損ねていたのだよ」
「えっ誕生日プレゼント?」
「…そうではないというわけでもない」
「顔真っ赤ですよツンデレさん」
「うるさい!」
「開けていい?」
「…あぁ」
「わーカワイイ!」


包みから出てきたのはシルバーリング。


「ありがとう真太郎!これ一人で買いに行ったの!?」
「高尾を連れていったが、お前が選ばなきゃ意味ない、などと言って全く役に立たなかったのだよ」
「さっすが、高尾君。ちゃんと分かってるなー」


「どこがだ」と不満げに呟いた真太郎に内心「真太郎は不器用だからなー」と思いつつ、リングを左手の薬指につけようとしたが、真太郎の手に阻まれた。


「待て」
「え、なんで?」
「付けるならこっちにしろ」


真太郎はリングを掴み、緊張しているのか、ぎこちない手つきで左手の中指にリングをはめた。


「薬指には将来もっと良いものを嵌めてやる」
「それって…」










「永遠に君だけを愛す」


(真太郎…案外ロマンチスト?)
(いらないなら返せ)
(ごめん!ウソウソ!)



→あとがき
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