俺色に染まれよ [ 2/4 ]


そんなわけで、大輝のせいで骨折した私は学校での荷物持ちやなんやかんや不便な事を全部やらせているあげく、お願いはなんでも聞く、そういう契約を為したのです。

ちなみに大輝が今吉さんに逆らえないのは、マイちゃんコレクションを全て人質に取られたからで、返ってくるまでは逆らえないんだそうな。

あの転落(最早わざと落とされたと言っても過言ではない)事故から初めての休日。朝今吉さんから来たメールには「ほんまつらい思いさせてすまんなぁ。青峰はどうせ練習来んかったやろしまぁ思う存分こき使ったってや!」と部長らしからぬサボり容認の内容が記されていた。

どうせなら普段我慢ばかりさせられてる皆に代わって大輝で遊び倒してやる!と家に呼びつけたのだ。そして一番に思い付いたのが以前から似ていると思っていたある方の台詞を言わせること。自他共に認めるアニメヲタクの私は、ずっと大輝にこれをやって欲しかったんだけど、ツンデレ(悪ガキ?)の大輝が素直にそんなことをするはずもなく、諦めかけていた。そこにこの絶好のチャンス、逃すわけがない…!迷惑かけられてる皆の云々かんぬんより、私にはこっちの方が重要なんです、うん。


「じゃあ次はね〜これ!」
「なんだこれ…つかこんな台詞どんな状況で使うんだよ」
「テニス」
「は?」
「テニス」
「…」
「はいはいそんなことはいいからちゃんと読んでよ。ご、よん…」
「ちょ、まっ!」
「さん、に、…」
「〜〜〜っ」


バトルアニメか何かだと思っていたのか、テニスと聞いた大輝は口を開いて間抜けな面を晒す。そりゃこの台詞がスポーツで使われるなんてまず皆無でしょうから。気持ちは分からんでもないよ、だからいろいろ考えて嫌になる前にとにかく言わせようと無理矢理カウントダウンを始めたのだ。


「“スケスケだぜ!”」
「あひゃひゃひゃひゃひゃ」
「…足治ったらしばく…!」
「ひー…っいやー実に良かったよ」


笑いすぎて出た涙を指で掬ってグッと親指を立てると大輝は恨めしそうに私を睨んだ。やーいやーい、赤らんだ顔で睨まれても怖くないもんねーっ!ピッと再生ボタンを押すと、本物のようななめらかさはないものの、声質は鳥肌が立つくらい瓜二つで心底大輝と同じ学校でラッキーだと思った。


「次が最後ね」
「まだやんのかよ」
「はいこれ!よろしく!」
「…更に意味分かんねぇぞ」
「大丈夫、皆意味分かんないから」
「なんだそりゃ」


いくよーっと手を挙げてまたカウントと共にキューを出す。大輝はゴクリと生唾を飲み込んだ後、恐る恐るメモの言葉を口にした。


「あ、…青峰王国(アオミネキングダム)…」
「っ…!くは、〜〜〜っ!」
「おい!何笑いすぎて悶えてんだ!せめてなんか言え!」
「うぐ〜〜っに、似すぎ…!!やば、あははははははっ」


何度も再生しては悶え苦しんでたらレコーダーを取り上げられた。その顔には羞恥心が詰まっていて、まるで別人のようだ。一通り笑い終えた私にむすっとこどもみたいに分かりやすく拗ねた顔の大輝が尋ねる。


「名はこんな意味不明な発言するような奴が気に入ってんのか」
「いやいや、これ抜き出してあるから意味不明だけど全体通して見たら凄い奴なんだから、いろんな意味で!」
「…ふーん」
「それに大富豪のお坊っちゃまで、チャームポイントは泣きボクロだし、気絶してもなおコートに君臨するとか、まずテニス上手すぎだし試合の時の半袖から見えるとか腹チラとかもう…キャー!」
「…名…」
「ん、なに?」
「オレの気持ち分かっててそれ言ってんのか」
「は、え…大輝の?え、何が?」
「オレがこんだけ尽くしてやってんのに分かってねぇのか!?」
「はい!?これは大輝のせいで折れた事に対する罪滅ぼしでしょ?」
「馬鹿か!誰がそんなんで休みの日までわざわざ出向くんだよ」
「大輝」
「指差すんじゃねぇ!あーもうだから…!」


 
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