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「桐原!」
「はい」
「ラッキーパーソンなのだよ!!」
「…はい?」


受付会場で再び会う約束をした黄瀬くんは仕事に戻り、私と赤司くんは真ちゃんが手伝いをすると聞いていた占星術研究会の“占い相談コーナー”にやってきた。教室一面が暗幕で覆われ、真っ暗な内装に所々ある間接照明の仄かな光が不気味さを醸し出している。一歩踏み込んでみると、ブースは一つ一つ暗幕で区切られ、そこに机が二つくっ付けられて、占い師と相談者が対面しながらボソボソとやり取りがなされていた。キョロキョロしながら進むと、お目当ての人物が何故かホラ貝を机に置き席についていた。


「真ちゃーん」
「桐原…?と赤司か。何をしにき…」
「遊びに来ちゃいましたーって真ちゃん?」


うつ向いてノートを見ていた真ちゃんは言いかけてフリーズした。そしてガタッと椅子を倒して立ち上がり先頭のセリフに戻る。膝まである紫色のフード付きマントを羽織った大男に鬼の形相で見下ろされて、一歩後退りした。


「ごめん、意味分かんない」
「今日のおは朝は特別編でラッキーパーソンも発表されたのだよ。蟹座はメイドだ!」
「おは朝よ…いくら占いとは言えもっと普通のに出来なかったのか…」


呆れていると、先ほどの物音と真ちゃんの叫びに人がわらわらと集まってきた。それを知ってか知らずか、真ちゃんが私の手を取り


「オレと付き合ってくれ」


真剣な表情でそう言った。会話を聞いていれば分かるとは思うけど、もちろん真ちゃんは“今日一日”のつもりで言ったのだ。だが私にはそれが伝わっても、今集まった人達はそうは思ってくれない。重い空気が漂っていた空間に、「おぉ」と言う占星術研究会の男性達の歓声と拍手、そして客の女性達の悲鳴が教室に広がった。その告白(勘違い)の一部始終を見ていた研究会の部長の「後はその子と回ってきなよ、ヒューヒュー」という昭和染みた冷やかしと共に背中を押され、ラッキーアイテムであるホラ貝と、手伝いの報酬である雑貨の数々が入った袋を受け取り、明るい廊下へと出た。


「桐原、今日は共に行動してもらうぞ」
「それはいいけど…私メイド服を着てはいるけど、メイドじゃないよ。その辺どうなんだろ」
「む…そこまで考えていなかったのだよ」


難しい顔をして考え始めた真ちゃんに、ずっと黙っていた赤司くんが口を開いた。


「だが緑間、都遥はこの後のペア参加でのスタンプラリーに黄瀬と出るらしいぞ」
「…そうだった」
「なに!?参加するならオレとしろ!」
「そんな無茶な」
「これで立候補者が出たな。これでペアは分からなくなったぞ都遥、良かったな」


「何で決めようか」と顎に手を当てる赤司くん。


「あそこで赤司くんが涼太相手に引くだなんておかしいと思ったら…わざとやったんだね」


言葉ではなく笑顔向けられただけだったが、全てを悟った。


「都遥はペアを決める方法、何がいいと思う?」


私はため息をついてから


「お好きにどうぞ」


と短く答えた。










13:大好きな人


 


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