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「辰也さんは全部知ってて、私がイジメられてた事を少なからず自分のせいだと思ってる。だからよく私を気にかけてくれるしすごく優しくしてくれる」
「お前、まさか氷室が優しいのはそれだけだと思ってんのか?」
「え、違うの?」
「…出たよ都遥の天然」
「はぁ?大輝何言ってんの?」


盛大にため息をついた大輝に続き涼太まで同じことをした。


「…こりゃあ」
「…先は長いッスね」
「何なの?」


残念な子を見る目付きの二人を交互に睨んでいると赤司くんがポンと肩に手を置いた。


「ま、逆に言うと全くそういう心配をしなくてもいいとも言えるだろ。な、都遥?」
「…全然話が掴めませんが」
「だろうね」
「なんか腹立つ…!」


にっこり見下ろす赤司くんがどう見てもバカにしている気がして惨めな気分になる。


「でも、良かったッス」
「は?何が」


眉毛をハの字に下げ笑った涼太は、聞き返した私に得意気に指を一本立て自信満々に言った。


「だって、都遥っちがオレになびかなかったのって、隠し事してる負い目と才能ある者に対する嫉妬心みたいのが少なからずあったからって事でしょ?」
「「「…………」」」
「え、皆どうしたんスか」
「何言ってんの?もっかい言うね、何言ってんの?」
「二回も!?」
「黄瀬…お前“デリカシー”って知ってるか」
「青峰っちだけにはそれ言われたくないッス!てかなんで!?オレなんか変な事言った!?」


じとっと自分を見る周りの目に、焦ってオロオロした涼太から「都遥っち、とりあえずごめんね…?」と何が悪いのか分かってないのがみえみえな謝罪をされた。


「いいよ、確かにそういう感情はあった気がするし」
「やっぱそっスよね!」
「でも、そのせいでなびかったってのは間違ってる」
「え!?じゃあなんで好きになってくれないんスか」
「言っとくけど!!!」


泣きそうな顔の涼太をビシッと指差し強く力を込めて言った。


「私、アンタが思ってるよりアンタラのこと相当好きだから!!!」


涼太を差した指を口の前に持ってきて、拳銃で撃った後、銃口から出る煙を吹き消すように、指の上にフッと息をかけ笑った。


「そこんとこ、よろしく言って自分でなんか恥ずかしくなって「な、なんちゃってーえへへ」と舌を出した私に、ポカンとしていた涼太が急にガッと私の肩を掴んだ。


「“ラ”って何スか“ラ”って!そこは“アンタ”で良かったんスよ!なんでオレ限定じゃないんスかねぇ!ねぇ!!」
「ツツツツッコミそこここここ!?」


ガックンガックン掴んだ肩を前後に振る涼太に抵抗しようとするが視界が揺れて上手くいかない。


「わわわ分かったたたりょーたっ涼太だけけけけすーすすすきだかららららあああああ」
「「!」」
「都遥っち…!!!」


止めてほしくてフラフラの脳でほぼ無意識にそう叫んだのを聞いて涼太の手が止まった。代わりに目を潤ませて私の両頬に手を添えた。ぐわんぐわんしてる頭でゆっくり近づいて来る涼太の顔をボーっと見つつ考えたのは、吐きそう。


「黄瀬ェェェエエエエエてめぇオレの目の前で堂々と何しようとしてやがるんだゴルァァ!!」
「グボァッ」
「?ふげ…ひょーは?」


突然眼前から左にスライドして消えた涼太を追って左を見ると、大輝が涼太に飛びかかっていた。


「都遥、大丈夫か?」
「あーあかひくん…うっ、吐き気ふる…」
「…黄瀬…死ぬまで走らせる」
「え、なんは言った?」
「いいや何も。とりあえず都遥は黄瀬に言ってくるんだ」
「なんて?」
「―――――」
「?…………うん…?」


掴みあう二人のとこにフラフラと近づき「涼太」と呼ぶと嬉しそうに「ハイッス!」と言った。その笑顔は次の私の一言でさらさらと砂になって消えた。


「ウソダバーカ」
「…………」
「赤司くんこれでい…って涼太!?りょ、涼太ああああああああああ」


全身固まったまま涼太は床に倒れ込み涙の海を作った。


「ブハハハハハハハざまぁみやがれモデルさんよぉ!てめぇはファンとよろしくやってなアハハハハハ!!」
「大輝…セリフの雑魚っぽさが尋常じゃないよ」


タケさん、私何で悩んでたんだっけ?なんだか、皆といたらそんな事考えてる暇がなくて、どうでも良くなっちゃったよ。


「帰るぞ」


赤司くんが時計を確認して、皆慌てて体育館から出た。


「都遥、大丈夫か?」
「…うん。辰也さんも私も、ちゃんと分かってるから」
「…そうか」


冷たい風が頬をかすめて体に力が入った。


 


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