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「都遥は誰が好きなの?」
「ブフッーーーーー!!!」
「ちょっ、汚なっ」


唐突な質問に思いっきりジュースを吹き出した。


「ばばばななななにそれ!!!」
「おっその慌てよう、いるにはいるんだな」
「ちっ違うから!」
「誰だったとしても皆驚かないから、言ってみな」


期待の目を向ける5人に冷や汗が流れる。


「ほ、ほんとに皆とはそういうのじゃないんだって!」
「えええええ!?」
「アンタあのメンツに囲まれて何もないってバカか!」
「待って…“皆とは”ってことは何?他にはいる。そういうことかね?」


聞き返されて、しまったという顔をした時には後の祭り。


「キセキにもなびかない都遥が惚れた男!?」
「今すぐ連れてこい」
「だれだれだれだれだれ」
「帝光!?」
「写真とかないの!?」


食い殺されるんじゃないかと感じるほど詰め寄られて更に冷や汗が流れた。


「いや、あの今外国に住んでる人で…」
「外国人!?」
「日本人なんだけど、お父さんの仕事の都合でアメリカに…」
「身長、体重、もろもろは!」
「身長は…180ちょっとかな?体重は分かんないけど、細身で筋肉質な感じ。もろもろ…?あ、バスケやってる」
「「「「「やっぱバスケか」」」」」
「…」


どういう意味だ、といいかけたけど間違ってもないから口をつぐんだ。


「アメリカなんて会えないじゃん」
「あ、いやそれが…今日帰ってくるらしくて」
「マジ!?なんで!?」
「私も朝メールで帰るよってだけしか…」


♪〜♪〜♪〜

携帯が鳴って、画面を確認する。


《着信:氷室 辰也》


「あ」


携帯を隠そうとした私を見て、勘のいい一人が気付いた。


「今話してたカレでしょ、ここで出な」
「え、でも」
「切れちゃうよ」
「わわっ」


極限まで携帯に皆が耳を近付け、私はピッと通話ボタンを押した。


「も、もしもし?」
『都遥?今忙しい?』
「いえ、友達とファミレスでお茶飲んでました」
『あー…そうなんだ』
「どうしたんですか?」
『実は、今地元まで帰ってきたんだけど、会えないかな?』
「えっ今からですか!?…」
『ダメ?』


皆を見ると、口パクで「いけいけ」と言われた。


「ダ、ダメじゃないです!」
『良かった。ファミレスって、よく行くって言ってた二丁目の角のお店?』
「そうです!よく分かりましたね?」
『そんな気がしたんだ。今オレがいるとこから近いし、迎えに行くよ』
「え、迎えって…いいです!私が行きますから」
『友達にも都遥奪っちゃうから謝りたいし。じゃ、あとでね』


ピッ


「あっ、辰也さんっ!?」


ツーツーツー…


ぐるりと見回すと全員笑っていた。


「そんな気がしたんだ…」
「ちょっ真似やめて!」
「都遥奪っちゃうから…」
「恥ずかしいから!」
「まさか辰也さんの方から来てくれるなんて」
「「「「「グッジョブ!」」」」」


皆息が合いすぎてて心底怖いと思った。


「辰也さん…優しさが裏目に出てます…」





―――――


カランカラン…

ババッ


「チッ…おじさんか」


カランカラン…

バババッ


「チッ…女子大生か」
「まだ10分しか経ってないから!」


お客さんが入って来る度に入り口を振り返る皆は明らかに他から浮いていて恥ずかしい。


「都遥が惚れる男がどんなもんかこの目で見極めてやんないと」
「ダメンズだったら追い返してやる」
「親か!」


カランカラン…


「おっ、イケメン発見!」
「どこ!?」


もういい加減しなよ、と思いながらも私も入り口を見てしまう。


「辰也さん!」
「ええっ」
「イケメンに恵まれすぎ…」


皆の声をうっすら聞きながら、夏の合宿の最後以来の再会に自然に頬が緩んだ。店員さんと短く言葉を交わした辰也さんはこちらに気づいて笑顔で手を振って、こちらへ歩いてきた。


「こんにちは」
「「「「「こ、こんにちは…」」」」」


あれだけうるさかった集団がもじもじしながらおしとやかに挨拶をした。

誰だお前ら!


「都遥、久しぶりだね」
「お久しぶりです!」
「友達、皆可愛い子ばっかりで驚いたな。氷室辰也です、会えて嬉しいよ」


にっこり笑った辰也さんに皆が頬をポッと赤く染めたのを見てキッと睨む。


「ごめんね、せっかく遊んでたのに。都遥から聞いてると思うんだけど…」
「ああはい、もう好きなだけ連れてって下さい!」
「私達はいつでも会えるんで!」
「どうぞどうぞ」


私をポイと輪から追い出した。


「ありがとう。見た目だけじゃなくて中身もいい子達だね」
「あーこれ猫被ってる外行き用なんで」
「外行き?」
「「「「「都遥?」」」」」
「わ、なんでもないです!早く行きましょ、じゃ、皆また学校でね!」
「都遥?どうしたの、あ、皆本当にありがとう、今度ゆっくり都遥の話でも聞かせてね」
「は〜い」
「喜んで〜」


グイグイ辰也さんの背中を押して、辰也さんはテーブルを振り返りながら皆にそう言って手を振った。


「ヤバイねあれは…」
「都遥があんな乙女な顔するの初めて見た。両方が両方を相当好きだね」
「年上、紳士、男前…惚れる要素有りすぎでしょ」
「むしろ付き合ってないのが不思議なレベルなんですけど」
「これはかなり強敵だね〜」



「「「「「どうする、キセキ…!」」」」」



20120921 玄米


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