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私達の前をゴールに向かって一直線に走っていた集団がごっそり消えていた。ポツンと残っていたのは立ち止まり振り返った大輝&涼太のペアだけ。


「な、なに?神隠し!?」


的外れと言わんばかりにため息をついた赤司くんはグイッと方向転換して大輝達の方へ向かった。その途中で見たのは巨大な落とし穴。穴の中からは戸惑いの声や怒号が聞こえる。突然の穴の出現に呆然と立ち尽くす参加者達をどんどん抜き去って、大輝達に追いついた。未だ走り出せずにいる地上の参加者の意識を覚醒させるように、スピーカーから音声が響く。


「落とし穴に落ちた人はその場で失格となるので、ご注意下さい」
「今更!?」
「グラウンドに落とし穴って本格的すぎ…」
「いいじゃねぇか。スリルがあって」
「青峰」
「あ?」


暢気に会話していた私達に赤司くんが前方のゴールを指差した。


「行け。来るぞ」


並べられた正反対の単語の意味を直ぐに理解する。後ろを振り返ると、残っていた参加者がこちらに向かって次々と走り出していたのだ。


「わぁあああああっ!!」


と三人揃って悲鳴をあげた私達は今にも襲いかかってきそうな二人三脚の集団から逃げるように走り出した。大輝は野性の勘で右に左にと進路を変え突っ走る。その度に私達も方向転換を繰り返し、後方からの定期的な悲鳴を聞きながら二番手でゴールした。バンドを外し、第2ゲームの行われる視聴覚室へと入る。今度はクイズ研らしくクイズだ。一問でも正解すればクリアだが、間違えれば即失格。ただし、パスは何度でも使える。


「よし、まだ私達だけだ」


大輝のおかけで他ペアに圧倒的な差をつけゴールした私達にスケッチブックとペンが渡された。一問目が、担当者によって発表される。


「問題です。日本三大庭園と言えば、兼六園、偕楽園、あとひとつはなーんだ?」
「う…なんだっけ…絶対聞いたことあるんだけど」


喉まで出かかって詰まっている言葉に苛立ちを覚えながら、赤司くんに尋ねる。


「赤司くん分かる?」
「ヒントは14年の歳月をかけ1700年に完成した岡山の庭園」
「あっ、分かった!」


私はスラスラと書きこんで赤司くんに見せる。


「当たり」
「やったー」


まだ解答時間が残る中、もう次の準備を始めた私達を見た涼太が大輝に声をかけた。


「青峰っち、知ってるッスか?」
「オレが知ってるのは幼稚園ぐらいだ」
「それ、庭園ですらないっス!」
「じゃあ、お前は知ってんのかよ!」
「知ってたら聞かないっス!」


ブザーが鳴って制限時間が終了。何の迷いもない私はスケッチブックをひっくり返して掲げる。


「正解は、後楽園です!」
「よしっ!」


立ち上がり隣のスケッチブックを見ると“パス”と書かれていた。


「お・さ・き・に」


砂を噛んだような表情の二人にそう告げて、半笑いで視聴覚室を出た。第3ゲームは、第2体育館で説明が行われた。クイズ研の女子生徒は、数枚のカードをトランプのように扇形に開いて見せる。


「この中から、カードを一枚選んでください」
「都遥が引いて」
「う、うん」


少しカードの上で指をさ迷わせてから、サッと一枚引いてひっくり返すとメッセージが書かれていた。


「第3ゲームは借り物競争です。がんばってください」
「え、でもこれを“借りる”…?」
「はい。お題に沿ったものを持ってきてくださいね」


もう一度カードを見直す。


“大好きな人”


「これ…どうしよ」
「迷う必要はないだろ」
「え?」
「このまま言えばいい『お互いがこのカードの人物だ』と」


赤司くんはあっかけらかんとして、女子生徒に振り返った。


「これでいいだろ」
「嘘はダメでしょ!」
「オレはそう思ってるが?」
「っ!」


女子生徒は口を両手で押さえて、小さく「わぁ」と感嘆を漏らした。


「…………ええっ!?」


私の顔が真っ赤になって、戸惑っていると扉がバンッと開いた。 入って来たのは大輝&涼太、テッちゃん&さつき、真ちゃん&あっくんの3ペア。


「み、皆一緒!?」


他のペアを押し退けあいながら入ってきた6人は説明もそこそこ、我先にとカードを引いて捲った。最初に引いた大輝&涼太。


「ヒーロー参上!?」


次は真ちゃん&あっくん。


「雛壇ホップステップジャンプ!?」


最後にテッちゃん&さつき。


「貝を解放!?」


次から次へと意味不明なメッセージを読み上げた皆の頬がひきつる。そして各ペアで相談を始め、暫くして全員が一斉に叫んだ。


「ここにある!!」


次の瞬間、テッちゃんは真ちゃんがはなみ離さず持ち歩いていたラッキーアイテムであるホラ貝を奪いあげた。


「コラ黒子!!」
「緑間くんからホラ“貝を解放”しました!」


あっくんは、私とさつきを並べて、自分も隣に並んだ。


「〜〜〜で二人ともやってね。せーのっ」
「ホップ」


ぴょんと、さつきが飛ぶ。


「ステップ」


ぴょんと、私が飛ぶ。


「ジャーンプ」


ぶわあぁっと、あっくんが飛ぶ。


「きゃああああああ」


と、女子生徒があっくんの跳躍を見て悲鳴をあげる。


「これで“雛壇ホップステップジャンプ”ね」


大輝と涼太は、全員をギュッと集めた。大輝が「黄瀬の号令で全員ポーズ決めろよー!」と叫んで、訳も分からず涼太の言葉を待つ。


「いくッスよ!“ヒーロー参上!”」


ポカンとする女子生徒に涼太が――


「ホラ、見てこのカラーバリエーション!赤司っちのレッドから黒子っちのブラックまで勢揃いッスよ!」


両手を広げて説明する涼太に、女子生徒はズラッと並んだ私達を見て頷いた。


「3ペアとも合格です!」


 


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