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クイズ研のスタンプラリー。この学園祭最大であり、一番人気の出し物である。まだ受付開始5分前だというのに、入り口は人で溢れ返っていた。


「涼太遅いねー」
「来ないなら来ないでオレには好都合なのだよ」
「…ハハ」


噂をすればなんとやら。遠くから必死に何かを訴えている涼太の声が聞こえ、周りから頭一つ身長が高い姿が見えた。手を振りかけて気付いたのはその隣の青い頭。あれはもしかしなくても…


「大輝…?」


私達を見つけてスタスタこちらに歩いてきた二人。


「んだよ、都遥も出んのか」
「違う!都遥っちは関係ないから!だから青峰っちはここには用はないっしょ、ね?ね?」
「お前のその必死さが嘘臭ぇんだよ」


何があったのか聞くと、スタンプラリーに出るため制服に着替えた涼太が会場に向かっているとたまたま大輝と出くわし、聞いても行き先を答えない涼太に疑問を感じて大輝はここまで着いてきたらしい。


「今からなんかやんのか?」
「クイズ研のスタンプラリー。ペア参加で、優勝賞品はレブロンのバッシュなんだって。しかもこれに参加した男女ペアは幸せなカップルになれるっていうジンクスがあるらしいよ。だから賞品に興味ない人も参加するんだとか」
「都遥っちー…なんで言っちゃうんスか…」
「えっダメ!?」
「だって」


ガックリ肩を落とした涼太は大輝をそろりと見上げた。


「よし、都遥はオレと出ろ!!!」
「ほらぁ〜」


涼太は更に頭を抱えた。「あ、ごめん」と口を押さえたが時すでに遅し。泣きそうな涼太に赤司くんは追い討ちをかけた。


「残念だがその努力は無駄だ。青峰の参加云々以前に、すでに緑間が都遥のペアに立候補している」
「ええええええっ緑間っちが!?」
「人事を尽くして天命を待つ!」
「はぁ?なんスかそれ!」
「意味分かんねぇ…がとりあえずオレが都遥と出る」
「オレッスよ!」
「オレなのだよ!」


こういう時に言いたくなるセリフ…なんだったっけな。ギャーギャー言い合う三人を客観的に眺めながら適切な言葉を探す。あ、そうだ。


「私のために争わないで!」
「「「は?」」」
「そうそう、これこれ。一度言ってみたいセリフの一つ」


一人で納得する私をポカンと見つめる三人に赤司くんが提案を持ちかけた。


「オレが公平にペアを決める方法を考えておいた。これはクイズのスタンプラリーだ。都遥が出題した問いに最初に答えた者が権利を得る。何か異論はあるか?」


赤司くんにしては至極真っ当な提案に皆虚を突かれたが、揃えて首を縦に振った。


「出るからには優勝したいし、なかなか重要だな…よし、いくよ!」


パンと手を叩いて、息を吸った。


「石川県の10品目の伝」
「輪島塗金沢箔山中漆器金沢漆器七尾仏壇金沢仏壇九谷焼加賀友禅加賀縫牛首紬」
「統工芸品といえばなんでしょう…」
「「「…………」」」
「さ、都遥。受付が始まるよ」


呪文のようにブレスも入れず答えた赤司くんが私の腕を引いて受付へと歩き出す。固まっていた三人がハッと気を取り戻して追いかけてきた。


「ちょっと都遥っちあんなの分かるわけないじゃないッスか!」
「お前バカな、ほんとバカ!バスケの問題にしろよバカ!」
「チッ…ひと足答えるのが遅れたのだよ…!」
「いや…私もまさか言い終わる前に全部言われてしまうとは…ヨソウガイデシタ」


受付につくと、既に登録を済ませたテッちゃん&さつきペアに遭遇。現状を見たさつきは「相変わらず大変そうだね」と苦笑した。


「クソッしょうがねぇ…こうなったら優勝するしかねーな、オイ黄瀬オレと組め!」
「青峰っちと!?何が嬉しくてこんなカップルだらけの企画に男と…でも優勝されるよりマシか…乗った!」


ここに今、クイズに参加するには無謀すぎるペアが一組誕生しました。


「真ちゃんどうする?」
「クッ…」


焦って辺りを見回す真ちゃん、そこに現れたのは。


「あれー皆なにしてんの」
「あっくん」
「紫原、ちょうどいい所に!」


経緯を聞いたあっくんは真ちゃんにまいう棒100本購入の契約をさせ、こうして全員が無事に受付を済ませた。スタートラインに移動して左右に首を振る。


「こんなのがあるって考えたら、結果的にどこもいい感じのペアになったよね」


横一線に並ぶ、私&赤司くん、テッちゃん&さつき、大輝&涼太、真ちゃん&あっくんの4ペア。クイズ研の説明によれば、スタンプラリーは、校内の各所に用意された四つのゲームに挑戦し、クリア後にもらえるスタンプを集めてゴールに戻ってくるというルールだそうだ。第1ゲームは、スタート地点の第2グラウンドの端に設置されたゴールまで二人三脚で横断。受付で渡されたバンドで足首を括ってくれた赤司くんが上体を起こした。


「そうだな。足は痛くないか?」
「うん!ありがと。
だってもし私があっくんと組むことになってたりしたら歩幅違いすぎて一歩も動けずに、この第1ゲームで終わってたよ…」


肩を組むところか私があっくんの背中に腕を回してどったんばったん転ける姿が容易に想像出来た。周囲がザワついてスタートラインに並ぶ生徒達の顔色が変わる。クイズ研が用意した櫓に部長が登って、片手を高くあげた。そこには黒いピストルが握られていて―パァンッ!と乾いた音が響く。参加者は一斉に走り出した。その中で先頭に飛び出したのは、大輝&涼太のペアだ。焦る私を尻目に、赤司くんは落ち着いている。


「都遥、落ち着け。青峰達の通った道を辿ればそれだけで上位グループに入れる」
「え?どういう」


こと?と聞きかけて、前方のたくさんの悲鳴とバコォォォォという不可思議な音に遮られた。


 


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