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『お疲れ様でした、今回も挑戦者は1人目すら倒すことが出来ず終了です。果たしてまだ誰も成し遂げていない10人抜きを果たす挑戦者は出てくるのか!えー次の挑戦者は、東京から来てくれた中学2年生の青峰大輝君!その挑戦者を迎え撃つのは数々の挑戦者を葬ってきたこの男だ!!』


放送と共に出てきたのは2m近いムキムキの男。


「でっか…あっくんよりは小さいけど…筋肉の分余計大きく見えるな…」


男は首や指の間接を鳴らしながら大輝の前に立ちニヤリと笑う。


「中学生かよ、それなりに手は抜いてやるけど、オレも仕事としてやる以上負けるつもりはねぇから…悪く思わないでくれよ挑戦者クン」
「…ワリーな、てめぇが仕事する前に終わるわ」
「あ゛?」
『1人目の挑戦、スタート!』
「よっ」


ボールがループを描いてスパッとゴールに吸い込まれた。


「なっ!」
「お仕事おつかれ」
「…くっ」


いつの間にか集まっていたギャラリーから歓声と拍手が起きた。


「けっ、大層なことぬかしといてDF甘すぎ、鍛えすぎて動き遅すぎ、集中力なさすぎ、バスケナメすぎ」
「…未経験者だったね」
「これなら楽勝だな」
『な、なんと中学生が一人目を撃破ー!二人目に挑戦だ!ここからは難しくなるぞ!』
「ひひっ少しは楽しませてくれるんだろうなクソガキ」
「ほっ」
『あり得ない事態だ!二人目もなんなく突破し三人目だ!』
「くくっここまで来たのはお前が初め」
「ふっ」
『四人目だ!』
「けけっあいつらは弱」
「んっ」
『五人目』
「ししっオレが」
「はっ」


バスケの名門の帝光中で1年からスタメンで攻撃の中心にいる大輝が、ただ体がデカイだけの大人に負けるわけがない。あっという間に10人目への挑戦になった。


『信じられないが次が最後の挑戦だ。10人目は高校時代IH経験のある最強の砦!』
「君スゴいね、相当やるみたいだし本気でいくよ」
「ちょっとは手応えありそうなのが出てきたな」
「…うん」
『ゲーム、スタート!!!』


このゲームへの挑戦が始まって初めてバスケらしい音が響く。


「………っ」


この人本当に上手い…!
DFに全く隙がない。あの大輝がゴールに近づけないなんて…


「…くそっ」
「あれ、そんなもん?案外たいことなかったな」
「っるせ!…都遥!このままじゃ正直厳しいぞ、アレやらせろ!」
「…分かった、でも無理しないでよ!」
「っしゃ」


大会前だし、もし本気出してケガでもしたらと思って大輝の持ち味である型のないバスケは止めてたけど…このまま負けるのはいただけない。


「でもそれで負けたら赤司くんに頼んで練習3倍だかんね!」

DFは一切手を弛めていない。なのに、大輝の体からフッと力が抜けて雰囲気がガラリと変わる。


「はー…わーってるよ。とりあえず…」
「!?」
「勝ちゃいんだろ!!」
「わーぉ…お見事」


動きの読めない大輝のドリブルにほんの一瞬DFから意識が逸れたのを大輝は見逃さず、目が追いつかない程の早さで二度、三度と体を横に揺らした瞬間…ヒュワッと横をすり抜け相手を置き去りにして、ゴールにボールを叩き込んだ。


「ほら、」
「ん?」
「やるよ、賞品」
「いいの?」


ぶっきらぼうに押し付けられたのは、遊園地のマスコットキャラ“エンチくん”の巨大ぬいぐるみ。


「あー…今日の礼だ」
「だ、大輝が私に礼…!?」
「しばくぞ」
「ありがと!」


自分の上半身くらいあるぬいぐるみを抱えて、ベンチへと戻った。


「なんスかそのぬいぐるみ!」
「大輝がバスケのゲームで取ってくれたの」
「バスケのゲーム!?オレもやって都遥っちにいいとこ見せたかったッス!」
「はは…それよりすっかり良くなったみたいだね」
「もうカンペキ!今ならどこでもまわれるッス!」
「そうこなくっちゃ」


言って静かに本を読む赤司くんを見る。


「赤司くん、本当にどこか行きたいとこない?」
「そうだな…じゃあ」


アレは楽しそうだ。と赤司くんが指差したのは、お化け屋敷。


「やだ」
「都遥?」
「行かない…私絶対行かない!行くなら、ね?3人で行って来なよホラホラ」
「なんだよお前、怖いのか?」
「こっ、こここ怖くなんかななななななななななななないよっ」
「何回“な”言うんだよ」


全力で痛くなるほど手を振る。


「怖くないんならいいだろ」
「怖くはないけど行きたくない!」
「恐さを演出するため最大で二人までしか入れないみたいッスね」
「なら二人ずつで丁度いいな」
「うんそうだね、って違う!なんで私参加前提!?」
「じゃあ公平にグッパーで別れようぜ。それなら都遥も文句ねぇだろ」
「うんそうだね、ってそういう問題じゃないから!」
「じゃあやるッスよ!」
「待っ」
「グーとーパッ!」
「…こうなる気がしてました」
「オレはまさか都遥と一緒になれるとは思っていなかったな」


嘘つけ!10回あいこが続いた間、赤司くんが出した手は全て私と同じだった。偶然なわけあるか。


「ぎゃああああ青峰っちいいい!!!」
「うわあああっ!声にビビっからお前もう黙ってろ黄瀬!」
「だってええ出たああああああああ!!」
「おわあああ!!!」


中から聞こえる大絶叫。今入った二人の声のせいで更に入りたくない気持ちが増す。


「あああ赤司くんいいい今からでも引き返し」
「次の方どうぞ」
「都遥、」
「やあああああああああ!!」
「叫ぶの早いよ」
「ぼわああああああああ!!」


後ろ襟を掴まれズルズルと赤司くんに暗闇の中へ引きずられていった。地獄の始まりだ。


 


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