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「今ってスゴいよねー、待ち時間も退屈じゃないようにいろいろ工夫されててさ」
「オレは都遥っちがいれば待ち時間もへっちゃらッス♪」
「あー…そう」
「冷た!」
「見て、ちょっとアレって…モデルの…」
忘れてたわけじゃないけど、ちゃんと涼太知名度あるんだな。学校の中だったら分かるけど街中で見た程度で気づくって相当好きでしょ。
「横の女何、彼女?」
「えー?それはないっしょ、あんなのが彼女とか」
「だよねー服もだっさ」
…あーあるんだ、こういうの。まぁ顔はどうしようもないとして、服は今日お気に入りの着てきたんだけどな。でもモデルさんの横にいるんだもん、私なんかのセンスじゃそう思われても仕方な……あれ…やばっちょっと目が…景色が霞むのが分かって、涼太の話に適当に相づちをうちながら下を向く。絶対こぼしちゃダメ…!耐えていると急にボンっと耳に圧力がかかった。
「ジャジャーン!キャラクター型ヘッドホン〜」
「?」
涼太が青い猫型ロボットのマネをして手に持ったヘッドホンをかざした。
「実はさっきトイレ行った帰りに買ったんスよ!都遥っちとお揃いで!まぁオレはしっかり都遥っちの声聞きたいし首にかけとこー。どう、オレ以外の声あんま聞こえないでしょ?」
「…うん」
「やった、じゃあ都遥っちの聴覚オレが独り占めッスね」
スッと両手が伸びてきて、耳の部分に被せられた。
「…聴覚独り占めとか変態か」
「ええええええええ」
「…ずびっ、あ゛ー」
「おっさん!?」
鼻をすすって目をこすった。
「涼太って意外とハイスペックだったんだね」
「今頃気づいたんスか?もしかして、惚れ直した!?」
「直すって何?最初から惚れてないからね」
「そんなバカな!」
「あんたどんだけ自分に自信持ってんの」
私が泣きそうだったことに気づいてて何も言わなかったこと。あの女の子たちのことについて何も言わなかったこと。もしこの場で私を、大丈夫?って慰めて、女の子に直接何か言いに言ったりしてたらこのあと絶対一日楽しくなかったし、女の子たちも周りのお客さんもきっと楽しめなかった。涼太は誰にとっても最良の選択をしたんだ。
「涼太は真ちゃんと逆だね」
「緑間っちと?」
「うん、真ちゃんは頭いいのにバカだけど、涼太は頭悪いのに賢い」
「それどう受け取ったらいいんスか」
「誉め言葉」
「…ありがとう」
「どういたしまして」
涼太と並んで歩くのって想像してたより大変なんだろうけど、こうやって守ってくれるんなら悪くないかなって思ったり。
「っはーーー!!大輝、赤司くんおまたせ!」
「おー」
「おかえり。ジェットコースターはどうだった?」
「楽しかったよーグルッグル回るし早いし上がるし落ちるし!ね、涼太」
「…う、うぷ」
「…涼太?」
「都遥っち強すぎ…オレ…もう、無理…ぅっ」
「ちょわあああ!待って待ってトイレ行ってええええええええ!!」
嗚咽が止まらない涼太をトイレに連れていき、落ち着いたら来てとつげてベンチに戻る。
「はぁ…ビックリした。涼太大丈夫かな」
「絶対ぇこうなると思ったぜ。だってアレ何回回転してんだよ。こっから見てるだけで酔いそうだ」
「そうかなー?普通に楽しめたんだけど…」
「お前の三半規管バケモンか」
「黄瀬が戻って来たぞ」
「お、涼太ー大丈…夫じゃないな…」
ベンチに向かってフラフラと歩く涼太にモデルの面影はなかった…。
「ちょっと休憩させて下さいッス…当分動けない…」
「お前このあとどうすんだよ!」
「じゃあオレがここで黄瀬を見ておくから、二人はどこか行って来たらいい」
「そんな、悪いよ。赤司くんまだ何にもしてないのに」
「いいよ。言っただろう、乗り物に乗りに来た訳じゃないから気にしなくていい」
「でも…」
「本人がいいっつってんだから行こうぜ」
「わっ」
腕を後ろにひかれて体制を崩しながらスタスタ歩く大輝に着いていく。
「大輝、なんか乗りたいのあるの?」
「別にねーけど…ん?あそこバスケットゴールじゃねーか?」「ゲームコーナーみたいだね。えっと…【スポーツDE熱く燃え上がれ!】…?」
あてもなく歩いて見つけたのはバスケの半面コートとゴール。近くにあるアトラクション紹介の立て札を見る。
【今年開催されるオリンピックにのっかって、スポーツの企画を催すことになったぜ☆毎月違う競技内容で規定のルールの元、ポイントを稼いで豪華賞品をゲットだ!今月の競技はバスケットボール!あなたを待ち受ける最強の10人の選手と1on1に挑戦、負けたらその時点で終了。倒した人数によって賞品が変わります。1on1のルールは挑戦者ボールでスタートしてゴールを決めれば挑戦者、ボールを取られれば選手の勝ちとする。】
「…だってさ!当然…」
「やるしかねぇよな!」
バサッと大輝が上着を脱いで私に投げた。