06 [ 3/3 ]


「はい次桐原ー」
「はーい」


担任から紙を受け取って席に戻る。


「都遥、どうだった?」
「真ちゃんに教えてもらったからかな、スゴい良かった!赤司くんは…あー聞くまでもないですよねすいません」
「気になるなら見るか?」
「結構です」


机に堂々と置かれた赤司くんの成績表が振り返った赤司くんの肩越しに見えた。一瞬見えただけですべての教科の点数を把握できたのは、赤司くんの成績表には1と大量の0しか並んでいなかったからだ。全教科満点。文句なしの1位。…そんな成績表なんて見せてもらっても、一喜一憂する要素が一つもない。


「遠慮しなくていいのに」
「…」


今回良かったとか言ってしまったのを今すぐ取り消したい。


「そ、それよりやっとまた今日から部活だね!いやー長かったな、楽しみだー!」
「そうだな、楽しみだね」


ゆるく曲げられた赤司くんの口角は嫌な予感しかしない。…部活、休もうかな。


「きりーつ、礼」


号令と共に教室が騒がしくなる。


「あ、あの赤司くん…私ちょっとお腹の調子が…」
「部活、行くぞ?」
「…はい」


前を歩く赤司くんの背中が怖いです。


「都遥先輩」
「ほいほい」
「ドリンクの粉がなくなりそうなんですけど買い出しどうしますか?」
「もうそろそろ本格的に暑くなるからねー。よし、次から倍買うようにしよっか」
「分かりました!」
「よろしくねー。さて、私はタオルの準備を…」
「都遥っち」
「ぅわあっ涼太!?」


体育館にてドリンクの準備を終え、部室に新しいタオルを取りに行こうと振り返ったら壁があった。正しくは、目の前に涼太が立っていた。いつも私を見つけると飽きもせず名前を叫び走りだきしめてくるのに、どういう心変わりなのか。そしてその明らかにバスケをする格好ではない私服はなんだ。


「都遥っち。オレは映画やショッピングも有りだとは思うけど、やっぱり遊園地がいいかな」


何の話をしてるんだこのモデル(笑)。


「は、はぁ…遊園地楽しいですもんね。行ってらっしゃい」
「なんで敬語?つーか行ってらっしゃいじゃなくて一緒に行くんスよ!」
「なんで」
「ん!」
「?………嘘ォ!?」


ん!と目の前に突きつけられたのは黄瀬涼太と書かれた成績表。


「ご…50位!?」
「掲示板に載るなら50位は上位ッスよね」
「涼太が…50位…」


信じられない。順位と名前を何度も確認するけど結果はもちろん変わらない。


「そういうことだから、今度のお休み空けといてね♪」
「マジですか…」


まぁ約束だし、出掛けるのはいいとしてその格好にはツッコむべきなのだろうか。


「遊園地か…最近行ってないな」
「実はもうチケットも予約して」
「ちょっと待ったああああ!!」
「「!?」」


バァァン!!と耳をつんざくような音がして体育館の扉が開いた。そこには、大輝が立っていた。


「黄瀬、そこまでだ。都遥とデートすんのはオレだ」
「何言ってんの青峰っち。オレが都遥っちと遊園地行くんスよ」
「これを見ろ!」
「…なっ!」
「大輝が…」
「「50位!?」」


先ほどと同じく突きつけられたのは大輝の成績表。そこには確かに50位と記されていた。


「でも…涼太も確かに50位だったのに…」
「同じだ」
「え?」
「同じなんスよ…オレと青峰っちの総合点が…!」
「そういうことだ」


こんなこと、あるんですか神様。


「てことでオレが都遥とデート行く」
「はぁ!?同点でなんで青峰っちになるんスか!」
「だいたいがデートの話は都遥がオレにしたんだからお前のは無効だろーが!」
「いーや違うね!先に報告したオレの勝ちッス!」
「オレだ!」
「オレッス!」
「あーもううるさい!元々条件は上位ならデートな訳だし私が二人ともと行けば文句ないでしょ。この際誰でもいいよ」
「ならオレもデートする権利があるよね?」


半ばやけくそな私の肩に手が置かれ、見ると全教科満点の眩しすぎる成績表をにこやかにかざした赤司くんがいた。


「…ひとつ聞いていい?3人ともなんで私と行きたがるの?他に行ってくれる友達いないの?」
「「「…」」」
「えっなにその呆れた目」


3人はそろってため息をついた。


「ところで、休みって言っても来週の日曜のオフ以外ずっと部活だよね…どうするの?」
「「「その日オレと行って他の二人は次の休みにでも…」」」
「…ここまで揃うとか逆に怖い」


互いを牽制しあう3人に挟まれた私はただただ苦笑するしかなかった。もうどうにでもなれ。



20120901 玄米


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