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『さぁ、朝から続くこのU-18ストバス大会も決勝戦だ!!今年は異例も異例、なんと全員中学2年生のチームが決勝進出だ!もう1チームはバスケの強豪永平寺高校の3年生!勝つのはダークホースか、それとも強豪の意地か…いよいよ、ティップオフ!!』
「いっけぇーーー!!」


わーっと観客が盛り上がる。私はテっちゃんと並んでベンチから皆を応援する。てっきり中学生しか出ないと思っていた大会は高校3年生までの大会で…私達以外は皆高校生。赤司くん強気すぎでしょ…なんて思ったのは始めだけで、あっさり高校生達を倒し続け難なく決勝戦に辿り着いた。帝光のバスケの強さに慣れてきちゃってたけど、やっぱり目の前の彼らは格が違う。ブザーが鳴って第1Qの終了を告げた。


「やっぱ決勝ともなるとなかなかだな、キチーわ」
「でも大輝がマッチアップしてる6番、クセあるよ。シュートの時は打つ前に頭を左に捻って目線のフェイクが二つ入る」
「マジかよ」
「マジマジ」


このストバスは1試合20分。要するに2Qしかない。現在12点ビハインド。まぁこっちはまだテっちゃんも温存してるし、全然心配なんてしてないんだけどね。


「都遥っち!俺にはなんかアドバイスないッスか?」


キラキラと笑顔を輝かせながら顔を寄せた涼太に後ずさりする。


「あー…そうやってニコニコ笑ってイラつかせたらいんじゃない?キレやすいみたいだから、きっと涼太殴ってすぐ退場してくれるよ」
「それなんか違う!」


どんな技も全部倍返しされて相当キてるみたいだし。


「赤司くん」
「なんだ」
「テっちゃん、出してあげないの?ベンチでずっとウズウズしてるんだけど」
「…そうだな。じゃあ黒子の出場に合わせて全員本来のポジションに戻す」
「はーやっと自由に出来んな。オレもう二度とPGやりたくねぇ」
「オレもCはやりにくいッス」
「黄瀬は黒子と交代だ」
「えぇっ!?」


そう、今までこのチームは全員ポジションを変えてここまで来た。他ポジションを経験するのも大事だという赤司くんの提案だ。インターバルの5分がやけに長く感じる。別にいらないって思ってるからかな?特に焦りもせずベンチに腰かける皆に上着でパタパタと風を送っていると、聞こえるはずのない…絶対に聞こえるはずのない声が後ろから耳にはっきりと届いた。


「もしかして…都遥!?」
「う…そ、そんな…アメリカにいるはずじゃ…!」


上着から手が離れてパサリと落ちたがそんなことは気にせず声がする方を凝視する。


「…なんだあのホクロ男」
「都遥っちと仲良さげッスね…」


睨みを利かせる二人をものともせず男はにこりと微笑んだ。


「やっぱり都遥だ、驚いたなぁ…!スゴい偶然だね」
「たっ…辰也さぁーーーん!!会いたかったああああ!!」
「「!?」」


一目散に走って思いっきり首に腕を巻き付けて、その大きな体にジャンプして飛び込んだ。


「おっと…!」


のと同時に、辰也さんはジャンプした私の背中と膝の裏に手を回してその場で一回転した。そして態勢を整えようと私を腕の中で小さく跳ねさせて手の位置を安定させた。いわゆる、お姫様だっこ。


「元気にしてた?」
「はい!辰也さんは?」
「元気だったよ。でも都遥に会えてもっと元気になった」
「や、やだ…辰也さんたら…!でも私も、元気出ました…よ?」
「じゃあオレ達一緒だね」
「〜〜〜辰也さぁん!」


目を細めて至近距離で見下ろす辰也さんの厚い胸板に更に顔を押し付けてすりすりする。ベンチの大輝と涼太が声を揃えて叫んだ。


「「あれ本当に都遥!?」っち!?」


ガタガタと震えながらこちらを指差す二人に気づいた辰也さん。


「ん?あれが都遥が話してたチームの選手?」
「はい!皆2年生なんですけど上手なんです、大会総なめするくらい強くて…我も強いけど」
「へぇ…」
「いつまでやってんだっ!」


ベンチの皆を一人ずつ確認してる辰也さんもカッコよくて見惚れてしまっていたら、ドドドドッと音がして次の瞬間、大輝に強引に引っ張られて地面に降ろされた。


「あ、辰也さん!」
「お前もベタベタひっついてんじゃねぇよ!」
「はぁ!?普通でしょ!?」
「都遥っち、お姫様だっこなら俺がいくらでもするから他の奴にはさせないで!」
「結構です」
「いだっ」


私を持ち上げようとした涼太の腕にチョップをかます。


「都遥、大丈夫?」
「気にしないで下さい、いつもこの二人荒いんでもう慣れました」
「ならいいけど…オレは随分嫌われちゃったみたいだね」


辰也さんの視線が私を挟んでる二人に移動して、追うように顔を見ると二人とも辰也さんを睨んでいた。


「二人ともなんて態度してるの!?辰也さん1つ年上なんだからね」
「都遥、いいよ。そういうの気にしてるの日本くらいだし。都遥もタメ口でいいっていつも言ってるのに」
「辰也さんにタメ口だなんて…恐れ多いです!」
「そこまで言われると逆に敬遠されてるのかと思うよ」
「まさか!大好きです!」
「「大好き!?」」


そろった大輝と涼太の叫びに被るように放送が流れた。


『インターバル終了!両チームコートに入って下さい!!』


赤司くんが話は後にしろ、と一言言ってコートに入った。


「そういえば…強いんだっけ?彼ら」
「え?あぁ、はい…」
「じゃ、都遥にそんな風に言わせる実力を拝見させてもらうとしようかな?」
「上等だ…!」


こんな挑発的な辰也さんは珍しい。それにあっさり乗る大輝はいつも通りだけど。


「…オレ、赤司っちに試合出してもらうよう頼んで来るッス」
「涼太!?」


結局涼太はむっくんと変わってそのまま出場することになったようだ。私はコートから少し離れたところで辰也さんに並んで見守ることにした。皆が珍しく丸く集まって何かを話していた。ポジション変わったし…なんかの確認かな?


「この試合本気でやるわ」
「オレもッス」
「…たまには全力も悪くないね。オレもボール回し以外もすることにしよう」
「僕も、正直いろいろカチンときたので」
「はぁ、お前ら…全力の理由が不純なのだよ」
『さぁまずはチーム帝光からのボールだぁ!』



 


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