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「お、予鈴だ。俺先戻るわ」
「んじゃ私もー」
「待って桐原サン!」
「?」
「ちょっと…いいっスか」


大輝が重い扉の向こうに消えたあと、屋上に黄瀬くんと二人きりになった。


「あの…俺桐原サンには感謝してるんッス」
「え、私なんかしたっけ」
「つまらなかった日々が今は楽しくてしょうがないんス。そのきっかけをくれたから」
「それなら大輝に言ってあげて。あいつが今までたくさん頑張ったから今の黄瀬くんに繋がってる。何よりそう考えられるようになったのは、黄瀬くん自身が変わったから。私はいいから自分を褒めてあげて」


しばらく沈黙が続いて、黄瀬くんの顔を見たらなんとも複雑な、でも真っ直ぐに私を見つめていた。


「…あ゛ーーーもう!!」
「!?」
「されることはあってもしたことなかったのになー」
「なに、どしたの?」


黄瀬くんが頭をぐしゃぐしゃとかき回し始めて、何が起こったのかと焦る。うつむいた黄瀬くんの顔を見ようと覗き込んだら目があった。


「好きだ」
「…え?」
「もしいつか…いつか俺が青峰っちを倒せたら付き合って欲しい」
「付き合うって…え、え!?」
「いや、もしじゃなくて絶対!絶対倒すんで、それまでに心の準備しといて下さいッス」
「え、あの…私は」


意味を理解し、そして黄瀬くんの予想外のなんとも強引な取引にただ顔を赤くしてわたわたしてると抱き寄せられ、頬に柔らかい感触がした。ちゅっというリップ音でキスされたのだと分かる。触れた部分が熱くて痛いくらいだ。


「な、なななな…!」
「いいッスねその反応。次する時は都遥っちからここによろしくッス!」
「都遥っち!?てか、待っ」


ここ、と自分の唇にトントンと人差し指をあてた黄瀬くんは、お弁当箱を掴んで小走りで校内へ戻って行った。


「…………」


一人取り残された私は、その日始めて授業をサボった。





―――――


「おーい、都遥っち?」


更衣室で着替えを終え、送ると言って聞かない黄瀬くんと家路を進んでいると、目の前で手を振られて思い返していた少し前の出来事から引き戻された。


「あ、ごめん」
「なーに考えてたんスか」
「黄瀬くんのこと」
「えっ」


膨れ気味だった黄瀬くんが頬を薄く染めて立ち止まった。本当に黄瀬くんはコロコロと表情が変わるなぁ。


「ねぇ、黄瀬くんまだ大輝に勝ったことないよね?」
「…そっ、スね」


あ、今度は落ち込んだ。


「もしさ、今私が黄瀬くんと付き合いたいって言ったらどうする?」
「ど、どうって…そりゃ丁重にお断りするッスね」
「その心は?」
「だって青峰っちを倒すって約束したッスから、すぐに実現するからそれまで待ってて!」
「良かった。もし喜んで付き合うッスとか言われたら一生口聞かないつもりだったので」
「試したんスかぁ!?」
「信じてたもん、涼太のこと」
「……え、…今…」
「ここまででいいよ。お風呂上がりはちゃんと柔軟するんだぞー!じゃ、また明日ね」
「あ、都遥っち!」


タタタッとその場から逃げるように走りだして、家の玄関に飛び込んで扉にもたれかかった。


「…名前呼んだだけなのに恥ずかし。黄瀬くんよくあんな告白出来るな…あ、涼太だった」


私の部活動生活は、初日からだいぶハードな展開になりました。



20120826 玄米


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