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「都遥ー今日昼休み屋上ー」
「…ッキャーーー!!」
「…あのバカ…!」



中学2年、4月下旬。2限目終わりの休憩で次の授業の準備をしている時、教室の扉からひょいっと顔を出した大輝が、廊下側から一番離れた窓際の私にまで聞こえる大声で、それだけ言ってすぐ見えなくなった。


「大変だな、桐原も」
「赤司くん…」


も、と言うことは、少なからずあのデリカシーとかそういうのを一切気にしないバカに困っているのだろうか。クラスの女子からはどういう関係?だの、付き合ってるの?だの、まさか告白?だの質問攻めにされたが全て切り捨てた。あのバスケバカが色恋にうつつを抜かすとは到底考えられない。

ギギギッ…重い音をさせて扉を開くと正面にある倉庫裏の壁にもたれながら大輝と黄瀬くんが座っていた。


「…ん?黄瀬くん!?なんで!?」
「なんスか、俺がいたらお邪魔なんスか?」
「いや、そういう訳じゃないけど」


泣き真似をする黄瀬くんに大輝がキモイと一言吐き捨て、二人の間のスペースに座るよう促された。座ってから気づいた、二人とも大きすぎる。このまま立ったら囚われた宇宙人状態だ。


「で、なんの用?」
「んだよ、用がなきゃ呼んじゃいけねーのかよ」
「嬉しいけどさ。大輝が休憩潰してまで呼び立てるなんて大事かと思いまして」
「話したかっただけだ」
「ほーじゃあ話しますか」


大輝は市販のパンの袋を、私は持参のお弁当の包みを開けながら会話をしていた私達を、黄瀬くんが瞬きもせずに眺めていた。


「黄瀬くんお昼は?」
「食べるッスけど…あの、一つ質問してもいいッスか…」
「どうぞ」


大げさに唾を飲み込んだ黄瀬くんから放たれた言葉に私も大輝も思考が停止した。


「二人って…付き合ってる?」
「「バカじゃね?」」
「えぇっ!?」
「誰がこんな貧乳と…ハッ」
「胸しか興味ない猿以下のアホ峰と付き合うとかないわ」
「誰がアホ峰だ」
「君だよカス峰くん」
「せめて統一しろ、おっうまそ」
「あー!玉子焼き!!」
「…………」


私にとってのいつもの会話も、黄瀬くんには違和感があったようで眉を寄せていた。どうしたの?と聞くと「二人の会話とか行動とか完全に恋人のそれッスよ!?」とスゴい剣幕で叫ばれた。でも付き合ってないもんは付き合ってないんだからどうしようもない。


「ま、付き合ってないんならいいんすけど…」


小さく呟いた黄瀬くんの真理は分からなかったけど、えらく可愛らしいお弁当箱を広げた黄瀬くんに疑問を抱いたら、毎日違うファンの子が作ってきてくれるんス。と、さも当たり前に言った黄瀬くんはタンスの角に足の小指ぶつけてのたうちまわれと思った。


「…だから黄瀬くんもここにいる、と」
「うん!」


どうやら、いつも大輝にひっついてまわる黄瀬くんは昼休みも大輝に着いていこうとして、バスケ分かってるやつと話してくるから来るなと聞かされて着いていくしかないと思ったらしい。なんじゃそりゃ。


「んー、まぁでも最近皆絶好調みたいだからねー。特に気になることはないけど…あるとすれば」
「あるとすれば?」
「ケガの心配…かな」
「ケガァ?んなもん当たり強いスポーツなら気ぃつけて当然だろうが」
「そういうのじゃなくてさ、あんたらキセキの世代は特にそうなんだけど、才能が先行しすぎてまだ体がそれについていける状態じゃないのにやっちゃって、いつか壊しそうってこと」
「ふーん」
「なるほど」
「これは制御するにも簡単に出来る事じゃないし、第一それを気にしながらプレイしてたら成長するわけもない。だからこれは難しい問題だと思うんだけど」
「気にするようになっちゃったらって思ってあんま言いたくなかったんだけど…あんたらそんな繊細じゃないしいっかなーと」
「ほぅ、そんなに死にてぇのか」
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ」


私の両こめかみにゲンコツをしてくる大輝の拳はとても大きくて、そして痛い…!


「黄瀬くんなんて他人のスタイルをコピーして再現してるわけだし、要注意だよ!」
「あぁ、うん」
「…ちゃんと聞いてた?」
「もちろん聞いてたけど、なんでそこまで出来るのに何の部活にも関わってないんスか?」
「それは俺も何回もぶふっ」
「まぁまぁいいじゃない。こうしてたまに君たちとお話しできれば私は満足なの」
「もったいないっス…」
「そう思うだろだからがはっ」
「お前ほんともう黙ってろ」


もったいないが大輝の口に無理矢理玉子焼きを突っ込む。こういうやつを黙らせるのには食べ物が一番だ。


「黄瀬くん、女の子から呼び出しとか受けてないの?」
「あぁ、なんか青峰っちが怖いみたいで一緒にいたらあんま絡まれなくなったッスね」
「それがひっついて回る理由か」
「所詮モデルの肩書き目当ての女ばっかッスから」
「…出た、黒黄瀬」
「なんかそれやだ」


 


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