「あれ、緑間くん部室にいたんだ!もう皆朝練のランニング行ったよ?」
「今日はシュート練習以外はしない」
「あー占い12位だったもんね。…んー、ビー玉2000個じゃ足りなかったか」
「むしろ多すぎなのだよ!オレにあのゴミ袋の束を持ち歩けと言うのか」
「緑間くんに負担かけるわけないよ。もちろん私が持ってお供します!例えトイレだろうと地の果てまでだろうと!!」
「それもどうかと思うが…」










動揺










「で、ひっつき虫やってると」
「イエス!」


教室移動はもちろん、男女別の体育も「オレは元々男なのだよ!」という私の完璧な演技に騙された先生が「あー…」と感嘆して、ふーっバレなかった…と言った私に和成は「頭が花畑すぎて最早尊敬するレベルだ」と返したけど、ちょっと何言ってるか分かんない。

普段から一緒にいる時間は長い方だと思っている。けど、今日更に長く近くで過ごしてみて分かったのは、緑間くんってスゴい。本当に徹底している。体育で手を使う競技は全部見学だし、美術の切ったり彫ったりや家庭科の裁縫、調理実習もノータッチ。普段からテーピング巻いてる上にここまでするなんて、やっぱ緑間くんってスゴい、学校がそれを了承しているんだから尚更スゴい。


「中津、何をしている。部活に行くぞ」
「あ、うん!ふぎぎ…」


プラス、今日分かったこと。ビー玉ってめちゃくちゃ重たい。一日中ビー玉を持ち歩いたせいで放課後の今となっては腕があがらず、引きずるようにしてゴミ袋を運んでいる始末。数歩先で振り返る緑間くんと頭の後ろで手を組む和成。正反対の意味で人気な二人がそろって私を見ている。なんて贅沢な光景…!ずりずりと移動は怠らず、私のおかれている環境に感謝した。二人もバスケ部員が同じクラスだなんて…しかも緑間くん!あと和成。



「だぁから手伝ってやるって言ってんだろー」
「ダメ!君達のお手を煩わせるわけにはいかないのです」
「へーへーそうですか…」
「おーい高尾。お前数学係だったな、明日使うプリント教室に持って行ってくれ」
「先生ーオレ今から部活なんっすけど…チェッ、しょうがねえな。じゃあオレちょっと行ってくるわ」
「うん、りょーかいっ!」


校舎で和成と別れ、緑間くんと部室へ向かう。いつもより余計な時間をかけて着いた時には、部室には誰もいなかった。


「よっと…つっかれたー」
「ベンチで休むな。着替えるのだよ」
「はーいどうぞー」
「違うだろ。オレは出ていけと…なんだその手は」
「いや、見られるの恥ずかしいのかと思ってせめてもの配慮を」
「オレじゃない!お前が恥ずかしいだろうとオレは…!…はぁ、何でもない」


両手で顔を覆いながらも指の隙間からしっかり覗く私に途方に暮れ、緑間くんは諦めて背中を向け、バサッと学ランを脱ぎ始めた。その姿に足をバタバタさせ心の中だけでひゃああああああ!!!と叫んでいると、足が袋に当たり次の瞬間、結んでいた袋口が開いてザーッと勢いよくビー玉が床に広がった。


「わっ!…わあああああああああああああおわっぎゃああああ!!!」
「うるさいぞ。なにを…っ!?」
「った〜…み、どりまく」
「…っ」


パニックで暴れている内にビー玉を踏んで、ずでんと無様に転んだ。痛みに耐えていると、振り返った緑間くんも同じことをしたらしく、大丈夫かと問おうとして目を開き固まった。天井との間に、シャツのボタンを全開にした緑間くんが私をまたいで見下ろしていたから。


「なんかすげぇ音したけど大丈…」
「か、ずなり…」


まるで緑間くんが私を押し倒したように見えるこの状況、正直変態の私ですらどもってしまう展開。ぽつぽつと言葉を発した私を見て、和成は血相変えて駆け寄ってきた。緑間くんの肩をぐっと押してその巨体をひっくり返し、私を抱き起こしてそっと包み込んだ。


「緑間…お前何してんだよ」
「和成…?」


ここにきて、あんな偶然もうないのにもっと目に焼き付けるべきだったチクショー!と通常思考に戻った私だったけど、強くかつ優しく私の肩を抱き鋭い眼光を緑間くんに突き刺す和成を仰いで、バカみたいに喜んでいる場合ではないのかもしれない。そう思った。

20121208
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