「中津、ちょうどいいところに!来週一軍が練習試合あんだろ?どことするか知ってるか?」
「えーっと…群馬の池本商業ですね!どうかしました?」
「監督が二軍も数人連れてくって話してるの聞いてよ、もしかしたら俺も出れるかもしれねんだ。ビデオあったら研究しとこうと思って」
「そうなんですか!私も後でビデオ研究するつもりだったんです、一緒にしませんか?」
「おぉ、頼むわ」
「はい!」










堪能










「美和…お前なにポジなの」
「和成、私バスケやってないよ?」
「そのポジションじゃねえよ。マネージャーでもなければファンでもない変なとこにいんなっつー意味!」
「秀徳LOVEシュートクラブの会長だってば」
「あーはいはい、そうだったな。真ちゃんはコイツの行動気になんないの?」
「邪魔をしないのであればどうでもいいのだよ」
「さっすが緑間くん!人事を尽くしてるね!」
「今のどこにその要素があったんだよ」


同じクラスなのがウンノツキ。緑間くんは、毎休憩寄ってくる私達に見向きもせず、本を読んでいる。でも「来るな」なんて言われたのは最初の内だけで、最近は会話までしてくれるようになった。何を言ってもダメだと諦めただけかもしれないけど。それは悲しいから私はあくまでも緑間くんが私達に心を許してくれた方に清き一票を投じようと思う。でもでも話してくれるということは本とか読みながらでも会話を聞いてくれてるってことだから満更でもないんじゃないか、なんて。


「ねぇ、緑間くん私のどんなところが好き?」
「好きなところがひとつも見つからないところだな」
「きゃっ!恥ずかしいよ、こんな公衆の面前で“好き”だなんて…!」
「おーい誰か美和に医者を呼んでくれー」
「もう手遅れなのだよ」
「…確かに」
「や…そんな、照れるよ…でもそんな大胆な緑間くんもステキ…!」


読書をする緑間くんの麗しい横顔を、乙女フィルター全開で見つめると「アホか」と呆れ顔の和成から脳天にチョップをくらった。あー今のでアホになった、今ので。だから私は悪くない。


「あ、そだ真ちゃん。池本商業って知ってる?」
「知らん」
「来週試合だろ。んー誰か情報持ってねぇかな」
「情報などあったところでオレのやることは変わらないのだよ。いつも通り人事を尽くすだけだ」
「ま、お前はそうだろうけど。いつスタメンから外れるかも分かんないオレは、お前より人事を尽くさなければならないのだよ!ってな」
「じゃあ和成一緒にビデオ研究する?」
「は?」


スカートのポッケから、池本商業と書かれたDVDケースをひょいっと取り出す。和成がポカンとしてるのはよく見るけど、あの緑間くんまでもが私を見て、眼鏡の奥の長いまつげをしばたたかせていた。何に驚いているのかも分からない私は、二人の予想外の沈黙にいささか焦りを感じたが、やがて正気を取り戻した和成が「やっぱ美和のポジションは謎だわ…」と呟き、緑間くんが「あぁ」と短く答えたところでチャイムが鳴り響いた。

私にとってはやるべき当たり前の行動なんだけど、二人のあの反応はどういう意味だったのだろう。そんな事ばかり考えてたら不意に先生に当てられた。が答えられずその場で立たされるはめになった。皆は気の毒に、と苦笑いだったけど、おかげで斜め前方にいる緑間くんをよく観察出来たから私には願ったり叶ったりだ。先生グッジョブ!


「よし中津、そろそろ座っていいぞ」
「いえ、もう少し堪能させてください」
「え」
「ブフォ!」


真後ろで吹き出した和成には、後で脳天チョップをお返しするつもりだ。

20121206
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