「私2年なんだけど、男バスのファンクラブってあなたがやってるの?」
「へ?ファンクラブ?そういうのとはちょっと違う気がしますが…近いことはやってます」
「私ずっと男バス追いかけてたんだよね。急にポッと出のあんたにこういうことされると困るんだけど」
「なんと!既にそのような方がいらっしゃったとは…私はなんて軽率な行動を…!」
「分かったら今後そういうことはやめてよね」
「そんな!秀徳バスケ部はもう私の生活の一部なんです!お願いします、私もその活動に参加させてください!!」
「…分かったわ。じゃあテストでも受けてもらいましょうか」










激昂










「ねぇ、中津さんにどんなテスト出したの?」
「バスケ部全員のフルネーム漢字で書きなさい」
「そんなの絶対無理じゃん!何人いると思ってるの」
「無理な問題出して諦めさせるのが目的なんだからいいのよ。だいたい、答えられたところで正解分かんないし」
「あはは、確かに」


廊下で声を潜め笑う女が二人。美和が無理だと泣きついてくるのを想像してほくそ笑んでいたが、その顔はすぐに崩れることになる。


「先輩!」
「あら中津さん、どうしたの?まだ10分くらいしか経ってないけど。まさかこんな簡単な問題が解けないなんて事はないわよね?」
「はい!私の愛を知ってもらおうと思いまして、身長、体重、誕生日、血液型、利き手、足のサイズ、ポジション、特徴も!いただいたルーズリーフ一枚では足りなかったのでノートちぎって書きました!」
「「………」」
「あれ、先輩?」


両面ぎっしり情報で埋まった数枚の紙を掲げたが、先輩はその紙を見て一歩後退りした。答え合わせを!と無理矢理押し付けると、数秒経って先輩はふるふると震えた後その紙をばらまいたのだ。宙に舞うそれに呆気に取られていると、先輩に胸ぐらを掴まれた。


「一年かけてやっと皆に名前を覚えてもらえるようになってきたのよ!?そのために1ミリも興味ないバスケ勉強して、朝早く起きて差し入れ作って、好きでもない奴にもちゃんと笑顔ふりまいて好感度あがるように努力してきたの!それをずけずけと練習に参加して一軍選手に媚び売ってんじゃないわよ!」

「…つまり?」
「バスケ部の中から彼氏選べんのは私だけだって言ってんの!今後一切バスケ部に近づくな!」
「それはこっちのセリフだ厚化粧の化けモンが」
「…は?」


先輩の手を払いのけ、制服を正す。はーっと長い息を吐いて鋭く睨みつけると先輩は怯んでよろめき、尻餅をついた。今度は私がしゃがんで、先輩の胸ぐらを掴む。


「私が媚び売ってるって思うのは勝手ですけど、真剣にバスケと向き合って戦ってる選手達に謝ってください。それに、自分が好きでやってることを努力だなんだの他人にひけらかすような奴にそれをやる資格はないです」


グッと顔を近付けた私に「ひっ」と小さく息を漏らした先輩は、涙目になりながらも私から目が反らせないようだった。その瞳はユラユラと恐怖に揺れている。私は静かに手を離し紙を拾い集め、動けずにいた先輩を見下ろした。


「選手の情報が載ってる紙をぞんざいに扱うようなレベルでバスケ勉強したとかいってんじゃねぇよ、情報の大切さ学んで出直してきな」
「は、はい…」











「すいません遅れました!」
「誰も来いと言った覚えはない」
「やだ〜緑間くん照れてる〜」
「照れてないのだよ!」
「美和、なんだその紙?」
「へへ…私の宝物!」

20121205
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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