「緑間真太郎くんですよね?」
「…そうだが。何者だ」
「私、中津美和と申します。緑間くんの迸る汗と体とテクニックが忘れられなくて追いかけてきました!以後、お見知りおきを!」
「み、緑間っち…いったいその子と何したんスか…?」
「何もしていないのだよ!第一こんな奴は知らん」
「あ!雑誌で見ました、緑間くんのチームメイトさんですよね。私、今後緑間くんと深いお付き合いを目指してるのでこれからよろしくお願いします!」










親睦










帝光中はそれはそれは広い学校で、体育館は4つもあるし軍ごとに分かれて練習しているし、なんだかいろんなことに圧倒された。

門前払いを食らうのも覚悟して職員室へ向かうと、出迎えてくれたのは赤い髪の男性。ジャージ姿で席に着き何やら書類の整理をしているのを見て、やけに童顔な先生だなと思ったけれど「生憎顧問は席を外しております。僕で宜しければお話をお伺いしますが」と至極丁寧な返しを受け、生徒でることが判明。生徒が先生の机で作業?練習はどうしたの?とか疑問は湧いたが、当初の目的を思い出しお言葉に甘えて話を聞いてもらうことにした。

会話の中で彼がバスケ部のキャプテンだと知り、そういえば月バスで見た…!と一人でテンションを上げてしまう。写真の感じでは一生懸命な爽やか系キャプテンかなと思ってたから、目の当たりにした威圧感や貫禄で、別人だと勝手に思い込んでいた。

この人が私と同じ中学生…?


「ところで、今日はどのようなご用件ですか?」
「あ、実は私先日練習試合をさせていただいた学校のマネージャーなんですが、その際試合に出場していた緑間くんに心をうたれまして。もしお邪魔にならないのであれば見学をお願い出来ないかと!」
「なるほど…それは、偵察ですか?」
「いえ!ただ私が緑間くんを愛で回したいだけです!」
「まわ…?」


初めて聞いた言葉だったのか、彼はぱちくりと目を丸くした。おっとつい本音が…と口を押さえると、「愛で回す…か」とおうむ返しされた。


「面白そうだ、許可しよう。監督にはオレから上手く言っておく。自由に動いて構わない、が、オレの目の届く範囲限定だ。いいな?」
「承知致しました、ボス!」
「…………ボス?」
「ギャングやマフィアにいそうなボスっぽい風格が感じられましたので!」
「…………」


ビシッと敬礼を決めるとボスはなんとも言い表し難いひきつった表情を浮かべ、行け、とジェスチャーで外に出るよう促された。

今のが帝光中バスケ部をまとめるキャプテン、赤司征十郎。対面してみると堅物でプライドが高い一匹狼なタイプかと思ったけど、私の“ボス”呼びの反応に怒っている様子はなかった。呆れている感はあったけど。案外冗談とかイケるくちなのかな。

なんにせよ、あのキセキの世代の中で最も緑間くんに近そうな人物な気がする。仲良くなって緑間くんの情報、聞き出したい…!


「…フッ、緑間も変な奴に目をつけられたもんだな」


ムフフフ…先ずは周りから固めるか、なんて策を練っている間に部屋でボスがひとりごちていた事を私が知るよしもなかった。





―――――


「緑間くぅ〜〜〜ん!」
「!?…あ、赤司!どういうことだ!」


両手を広げ抱き着こうとした私の頭を緑間くんが掴んで、これ以上近づけまいと肘をピンと張っている。溝にはまった自動車がアクセルを踏むみたいに、その場で走り続けて手は緑間くんに届かず空をもがいていた。

ボスは緑間くんの問いかけに口角を上げ、私をチラリと横目で見やる。その顔は某小学一年生の少年が事件を解決していく作品によく出る黒い犯人の笑顔みたいなね、何が言いたいかというと、とても悪そうな笑顔だったんです。


「お前の困る顔が見られそうだったからな」
「なっ…!」
「その顔いただきます!」
「お前っ」
「ああんっ痛くしないで…」
「!!!??!?!!」


ボスの返答に驚いた緑間くんの表情を押さえようとカメラを構えた。けど腕を掴まれて阻止されてしまい、同時に上目遣いで変な声をあげてみれば、緑間くんは飛び跳ねて後退した。その際足を絡ませて尻餅をつく。みるみる白い肌が真っ赤に染まってまるで少女漫画のヒロインみたいだった。

美人さんだし、そんじょそこらの少女漫画より良い役こなせると思う。

パシャリとシャッターを切った音で我に返った緑間くんはよろよろと立ち上がって、メガネの位置を直した。でもその指先はカタカタと震えていて。


「女がそんな…っは、はっ破廉恥な発言をするな!」
「可愛いいいいい!!!」
「はは。思った通り、楽しめそうだ」


私が初めてフィルムに収めた緑間くんは、真っ赤な顔をして尻餅をつく可愛い姿でした。

20130117
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