to be in agony! [ 1/4 ]


「ねぇねぇ、きよたんきよたん」
「お前その呼び方やめろっつってんだろ轢くぞ」
「この訳って何?」
「聞けよ!!」


受験勉強というものは、夏が肝心だとか言いますけれども。冬休みすら終わってしまった今、私は夏にサボった分を取り戻そうと、友人である宮地くんに頼み込んで必死に勉強を教えていただいております。宮地くんはいつ頼んでも「いやだ」「だるい」
「やらねぇ」と返すので、最近は直接家に押し掛けて断れないようにしている。


「毎度毎度なんでオレん家来てんだよ、自分の家でやれよ」
「だって一人じゃ限界あるんだもーん。それに志望校が同じきよたんと勉強するのが一番いいかと思って」
「学科ちげぇだろ。一緒にしたところで意味ねえじゃねぇか、帰れ」
「いやいや〜まあそうなんだけどさ、きよたん幅広くなんでも出来るから便利なのよ」
「…それが本音だな」
「てへっ」
「殺すぞ!あーこのthatはthink that〜で接続詞だから…」


なんやかんや言いながら、最後はこうして面倒をみてくれる。毒舌ではっきり物を言うから勘違いされやすいけど、根は優しくていい奴なんだよね。


「お前ほんと馬鹿の極みだな」
「………」


素直すぎるところは今すぐ改善してほしいけど。てか馬鹿の極みって何、技かなんか?これでも名門秀徳でテスト前に勉強しなくても成績がいい宮地さんと同じ学校を目指せる程の実力はあるのに。その私に対して馬鹿の極みだなんてちゃんちゃらおかしいぜ!


「ブツブツ言ってないでやろうか」
「ハイ」


宮地清志。こやつがにっこりと満面の笑みを浮かべたら危険だ、ガチギレ前か…時すでに遅しだ。


「いいか、次に俺の事をイライラさせたら襲うから」
「はい!!肝に銘じて勉学に励みます!!!」
「よし、続けろ」
「イエッ…サ…え、今…?」
「あ?」


私の、耳か、脳が、おかしくなっていなければ、確か「襲う」とか、聞こえたような…。


「い、今…なんと…?」
「名が!俺を!イライラさせたら!襲う!分かったかバカ」
「あぁ、やっぱり襲うって言ったのか。オッケーオッケー」
「………」
「襲っ!?」
「遅っ!」


呆れたようにため息をついた宮地先生様は、シャープペンシルを机に転がし頬杖をついた。表情は明らかに私をバカにしている。


「お前さぁ、その鈍さ何とかなんねえのか」
「な、何とかって言われても…これは生まれついてのものでして…」
「そんなんで大学の飲み会とか行って酔ったりしたら本当に心配なんだけど」
「まぁ…、大丈夫っしょ!」
「その軽さが恐ろしいよ俺は」
「まぁまぁ、学科も違うわけだし宮地くんには迷惑かけないからさ!」
「………襲う」
「イラッとした、襲う」
「ええええええ!!な、なな何で!?今のどこにイラッとする要素が…」
「分かってないことが更にムカつく」


どうやら本当に怒らせてしまったらしい。舌打ちし、頬杖をついていた手で机を叩いて立ち上がり私の肩をドンっと押す。その力はあまり強いものではなかったけれど、私は重力に逆らうことも出来ずラグに体を沈めた。


「み、宮地さーん…?」
「黙れ」
「ひぃぃっ!す、すみません!」
「こういう状況になったら、お前逃げ出せんの?」
「え?」
「のこのこ男の部屋に来て、危機感ねえし、襲うっつっても態度変わらねぇし。どういう神経してやがんだ本当」
「襲うってのは冗談かと…はは」
「それが無防備だって言ってんだよ俺は!」


 


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -