meine Liebe [ 3/5 ]


「と、僕の可愛い妹が不本意にも君に好意を示しているんだが、どうするつもりだ?テツヤ」
「それは“可愛い妹の告白を断ったら許さない”なのか“可愛い妹と付き合おうだなんて許さない”どちらの意味でしょうか」
「あえていうならどちらもだね」
「…はぁ、困りました」


浅くため息をついた黒子先輩はいつもの淡泊な声でそう言ったあと席を離れ、私の隣に立った。


「女の子に告白させて身を引く程ヘタレでもないので、ここは潔く赤司くんと戦うことを選びます」
「おおぉっ!!」
「黒子先輩!」


飛び上がらんばかりの青峰先輩と黄瀬先輩の歓声は、まるで私の心を表しているかのようだった。

こういうとこ!黒子先輩のこういう男らしいところに惹かれたんです私は!


「名さんは僕が責任を持って守ります。ですから安心して京都へ帰ってください」
「それは“宣戦布告”ととっていいのかな?」
「ちょっ、何!?宣戦布告って。そんな大袈裟な…」
「はい“宣戦布告”です」
「く、黒子先輩まで何言ってるんですか!?」
「…頼もしいね。名を泣かせたりしたら僕は何をするか分からないよ?」
「ありえないので大丈夫です」


“僕が泣かされることはあるかもしれませんが”と黒子先輩が付け加えた一言にその通りだと腹を抱えて笑う馬鹿な先輩二人は殴っておく。


「皆、そういうことだ。今日で名の護衛は終了。今までの事感謝しているよ。明日からは各々自由に自分の時間を過ごしてくれ」
「やった!これで変な噂とも濃い先輩ともおさらばだ…っ!」
「名っち俺達の扱いヒドくないスか!?」


涙目の黄瀬先輩は無視して、兄の解散の言葉を合図に、帰り支度をし店を出る。
お店の前で軽く挨拶を交わし、私を送るという黒子先輩以外とはそこで別れた。暫くして兄がひっそり後ろを着いてきているのに気付いて、行き先を空港と告げたタクシーに押し込んだり…ひと悶着あったけど、それはまぁこの際いいや。


「……………」
「…さ…、名さん?」
「わっ!は、はい!」
「どうしたんですか?」
「ふ、二人きりになると照れるなぁ〜なんてハハ…」
「今まで何度も二人で帰宅してきたじゃないですか」
「そうなんですけど…」
「でも、気持ちは分かりますよ」
「え?」
「付き合って初めての帰宅デートですからね。僕も緊張してます」
「先輩も緊張とかするんですか」
「いったい僕をなんだと思ってるんですか」
「…すいません、へへ」
「反省してませんね」


普段あまり表情を変えない先輩が楽しそうに笑顔を浮かべるものだから思わず笑ってしまった。

ふと、どちらからともなく触れた手をそっと握り合う。透けるように白い黒子先輩の肌は思いの外暖かくて「こども体温ですね」なんて茶化したら少しだけムッと眉を寄せて「そんなことないです」と投げやりな返しを受けた。


「赤司くんに許可も得ましたし、これからは気兼ねなく名さんと触れあえますからね。真夏で暑いからと言っても手を離しませんから」
「ふふ、望むところです!」


でも、もう頻繁に連絡を取ったり、会いに来ていた兄さんとの関わりが減るのかと思うと嬉しい半面、少しだけ寂しい…と思ったり。

今度連絡があったら優しくしてあげよう。

すっかり暗くなった空を見上げ、京都で一人頑張る兄の武運長久を祈った。

東京から応援してるよ、征にい様!



―――――



「せんぱーい!お待たせしました」
「いえ、僕も今来たばかりで…」
「?どうかしました?」
「私服だと雰囲気が変わりますね。可愛いです、よく似合ってます」
「そうだろう、名は服のセンスもいいからね」
「やだもう先輩った…ら…」
「……………」
「……………」
「ん?どうした二人とも、心底驚いたような顔をして」
「兄さん!?」
「赤司くん、どうしてここに…」
「涼太から二人が今日初デートだと聞いてね、邪魔しに来たよ」
「ついに堂々と邪魔って言ったよこの人…!!もうダメだ」
「今日は映画館だったかな?丁度見たいものがあったんだ。さ、行こうか」


わざとらしく私と黒子先輩の間に割って入った兄に、何も言い返せなかった。黒子先輩も諦めたらしく、遠い目をして空を眺めている。

もぬけの殻の私達は、一人楽しそうな兄に連れられ、映画館に向かい賑やかな街中へ紛れていった。










meine Liebe


(今度黄瀬くんをシめておきます)
(お願いします)
(…!?(なんか今悪寒が…))


→あとがき


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -