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「よーし、だいたいこんなもんかな!」
「あ゛ぁ〜〜〜〜しんど」
「何言ってんの。普段あんだけ激しい運動しといて」
「やらしいことは別だもん」
「バスケだバカあああバ!ス!ケ!!」
「あ、そっち?」
「そっちしかないわバカ!」
「…」


ぶつくさ言いながら三角巾と手袋は外したのにマスクはつけたままなとこを見ると、顔、赤いんだろうな。

それにしても、紫原からのあだ名ちんはよくオレにバカバカ言う。今日だってもう両手で足りないくらい。ずぼらなオレの為にこうして部屋に来ては掃除や洗濯をして休日を潰してしまう紫原からのあだ名ちん。オレとしてはもっとふたりでまったりと過ごしたいのに。一度洗濯物を干す紫原からのあだ名ちんの背中に“夫婦みたいだね”って言ったら“むしろ介護でしょ”と吐き捨てられた。…思い出したらなんか腹が立ってきた。オレに怒る権利なんてどこにもないんだけど。掃除機を戻しに行った紫原からのあだ名ちんを追いかけ背後に立つ。


「ねぇ紫原からのあだ名ちん」
「なにー」
「オレ彼氏なんだけど」
「だからどうした」


物置の扉を閉めて振り返った紫原からのあだ名ちんは腰に手を当てて、オレの方が随分身長が高いのに見下された錯覚に陥った。いつもならここで“なんでもない”と諦めてしまうけど、今日は違う。


「強気な面倒見のいい紫原からのあだ名ちんも好きなんだけどさ〜彼氏としてはやっぱ…」
「っ!?」
「恥じらう可愛らしい紫原からのあだ名ちんも見たいんだよね」


わざと大きな音を立てて紫原からのあだ名ちんの顔ギリギリを通って扉に手をつけば、紫原からのあだ名ちんはびくりと肩をあげて目をつぶった。危害を加えるつもりはないのに、怯えた目で見上げられて加虐心が刺激された。


「その顔、オレ以外の誰にも見せないでね」
「…っえ…あ、あの…ごめんね。私ちゃんと彼氏だと思ってるから…」
「んー。じゃあこれで許してあげる」
「んぅっ」


紫原からのあだ名ちんはオレを怒らせたと思ったみたい。許すも何も怒ってない。だけど珍しく従順な紫原からのあだ名ちんが可愛くて可愛くて、噛みつくみたいに唇を奪った。
本当はテスト前の貴重な休みを返上してオレの部屋を掃除したせいで夜中に勉強してたこととか、オレが間違えて出したゴミを回収して出し直してくれたりとか、本当は全部感謝してるんだ。でもオレは恥ずかしくて面と向かって“ありがとう”なんて言えないから、このキスで伝わればいいのに。

紫原からのあだ名ちんが息苦しそうに眉間にシワを寄せたのを見て唇を離した。


「っは、…怒ってないじゃん」
「うん。そんなこと一言も言ってないし〜」
「…ズルい」
「オレは急に女の顔する紫原からのあだ名ちんのがズルいと思う」
「はぁっ!?」










紫が逆襲


(ほら、ゴミ捨て行くよ!)
(え〜別にいいじゃん)
(虫涌いてもいいの?)
(それはやだ)



→あとがき
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