負け犬勝者 [ 2/2 ]


「ご飯作るのが上手い名っちが好き」
「んん!?なっなにそれ!文章じゃない!そんなのあり!?」
「ルールは“ん”がつかないことってさっき聞きましたけどー?」
「ぐっぬぅ…!」
「ほら早く」


予想外だ、あまりにも!
さっきの質問はこの伏線か…ちくしょう、知将であるこの私としたことが!!…少し狂いはしたが私のやることは変わらない。ただ計画を遂行するのみ。


「金吾!」
「キンゴ?」
「え?衛門府の唐名だけど」
「…それこそ何って感じッスよ。オレの番ね、午後の授業いつも寝ちゃってる名っちが好き」
「なんで知ってるの!?」
「さぁ?」


今日の涼太はイライラしているせいか、どこか高圧的だ。
と、それは置いといて。なんで涼太より後ろの席なのに寝てる事知ってるの!?そっちの方が気にな…る…ちょっと待て。


「私また“き”!?」
「あれ?そうだっけ?そんな事よりさっさと続き」
「や、」
「や?」


やばい。この作戦の唯一の弱点は、相手も同じ言葉尻で回してきた場合対処できないこと…!やばいやばいやばいやられた!!


「名っち〜?」
「タ、タイム!」
「はぁ〜、30秒ね。い〜ち、に〜い…」


ど、どうする!?まさかこんな展開になるとは…き、き、金箔…筋肉…近所…あああなんかいいのが出ない…何かないか、何か涼太を困らせるような何か…!

・・・あ!!!


「さーんじゅう。さ、悪あがきもここまでっスよ。“き”の続きどうぞ?」
「黄瀬くんの、わがままだけど最後には私に甘いところを愛してる」
「え…むぐ!?」


ぱちくりと目を瞬かせた内に、私は抱いていたクッションを放り投げ両手で涼太の顔を挟んで勢い任せに口付けた。
見たか!私の機転のきいた返し!いや、聞いたか!かな?そんなことはこの際どうでもいい。涼太、君にも見せてあげたいよ君のその間抜けな面をなぁ!はっはっは!!


「そういうわけだ。風呂は諦めな、少年!」


ベッドの上に仁王立ちし、石化状態の涼太を見下ろす。してやったり。勝ち誇った笑みを浮かべる私を見て涼太が笑い出した。


「あーあ!俺の好き好き攻撃で照れて降参する名っち見るつもりだったのに、ぶち壊しっスよ」
「私がそんなタマか!」「ははは、んなわけないか。でもまさかこんな手で来るなんて…やっぱ名っちには敵わないっスわ」
「そうだろうそうだろう!」
「ま、結婚したらいつでも一緒に入れるし、楽しみは取っとくっスよ」
「そうだろうそうだろう!…え、は!?結婚!?なにそれ!?」
「腹立つから今日はもうなんも喋らないっス」
「えええええええ!?」


気になるじゃん!どういうことなのさ!
なんて詰め寄ってみたけれど、涼太はツーンとそっぽ向いたまま答えてくれなかった。あげくニヤついた顔で「どうしても知りたいなら俺と風呂に入ることっスね」とか発言するもんだから、さっき今はいいや的なこと言ってたくせにまだ諦めてなかったのかと、私は苦虫をかみ潰した。










負け犬勝者


(ねぇ、なんで授業中寝てるの知ってるの?)
(面白いから先生含めてみんな黙ってるけど、名っち寝言ひっっっっどいっスからね)
(ま、マジでか…!)

20140110
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