女の敵! [ 4/5 ]


トボトボと、家に向かって歩く。
最低…ずっと私の反応見て楽しんでたんだ…って、あれ?あいつが巨乳好きなんて最初から知ってたじゃん。それに毎回会う度同じやり取りして…なのに…なんで私は…泣いてるの?涙に気づいて、立ち止まった。拭っても拭っても溢れてくる原因を考えてみるが答えが出ない。浮かんで来るのは、青峰との想い出。


「…そうか、私、青峰が…」
「待った!」
「!?」


声に気付いた時には、後ろからぎゅっと抱き締められていて…走って来たのだろうか。耳のすぐそばで、浅い息が聞こえた。


「な、なにしてんの!?こんなとこあの女の人に見られたらまた勘違いされちゃうよ!」
「…勘違いじゃねぇ」
「私の事嫌いなんでしょ、離してよ」
「…離さねぇ」
「駄々こねる子供か!
女とも思えない私にくっついてないで早く」
「名、好きだ」
「じょ、冗談キツいよ…早く帰って宿題しないとっ!?ちょっと!」


離してもらおうと腕を掴んで下から抜けようとしたらもっと強い力で抱き締められてしまった。

「好きだ」
「っ…ふぅ…」
「!?泣いてんのか!?」
「だってっ…私のこと嫌いって…」
「んなこと言ってねぇだろ?貧乳は嫌いだけど」
「っ!やっぱ嫌いなんじゃん」
「でもそれを打ち消すくらいお前が好きなんだよ」
「よ、」
「?」
「よくそんな恥ずかしいことサラッと言えるね。青峰そんなキャラだっけ?」
「…お前、俺がせっかくいい雰囲気にしたのに台無しじゃねぇ…か…」


青峰があきれたように、腕の力を緩めながら顔を覗き込んだ。


「…な、なによ!」
「かはっ、はははははは!!」
「笑うな!!」
「なんだ?恥ずかしかったのか?ん〜?」
「うるさぁい!」
「そんなに顔真っ赤にしやがって…」
「誰のせいよ!誰の…」
「ちょっと黙ってろ」
「…ん」


肩を捕まれ、グルっと回転させられて目の前に青峰の顔赤くなる暇もなく口付けられた。「あ、そういえば今日の日替わりって月一のレア物だったよね?」
「そうそう!幻の黒毛和牛ステーキランチ!毎月このために生きてるって感じだよ〜」
「よーっし、食欲わいてきた!おばちゃん!私幻の黒毛…」
「おお?今日はステーキの日か…食った肉が全部胸に移動するよう精々祈んだな」
「またそういうことをこんな人の多い場所で言うか…!」
「じゃあ二人っきりの時ならいいのか?」


青峰はグッと名の耳に顔を近づけて囁いた。


「ひ・ん・にゅ・う」
「〜〜〜〜〜〜!!」


顔を赤くしてわなわなと震える名とは逆に、青峰は不適な笑みを浮かべながら去る。


「皆…」
「特別にお弁当にしてもらうようおばちゃんに頼んどくから行ってきな」
「ありがとう」
「ファイトー」
「おぉ!待て青峰ええええええ!!!」「…それにしても。付き合う前よりいじられ方酷くなってない?」
「いいんじゃない?あれで。あいつらは普通にイチャイチャするよりこっちの方が似合ってるよ」
「ま、確かに」


――――――――――


「やっぱりここにいた」
「あ?二人きりになりたくて来たんじゃねぇの?」
「ち、違うわよ!」
「素直じゃねぇ貧乳」
「〜〜〜!!この」










「女の敵!」


(でも好きなんだろ?)
(調子のんなアホ峰!)

20120722 →あとがき
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -