譲りません [ 1/2 ]


「好きです、付き合って下さい」
「うん…んんんんんん!?」
「良かった。これからよろしくお願いします」
「ちょっと待ったァ!え、黒子くん!?なんか流れに任せて返事しちゃったけど、え、何今告白…された…?」
「はい」
「いや、はいっていや、え!?気持ちは嬉しいんだけど、その前にこのギャラリーは何!?」


帝光中学校バスケ部。
部員100人以上を抱え、掲げられた唯一の理念は“百戦百勝”絶対勝利。そんな超強豪のうちの学校には“キセキの世代”と呼ばれる5人がいて、今、私に告白してきたのは、幻のシックシマンというキセキの世代を影で支えている黒子テツヤくん。そして何故かその後ろに、キセキの世代の5人が一列に並んで、こちらを見ていた。


「何って…皆が着いていくと言うので…」
「それで素直に連れてきちゃったの!?てかあんたたち何しに来たのよ!」
「んな邪険にすんなよ。告白なんてテツの一大事を見逃すわけにいかねぇだろ?」
「だろ?じゃない!ほんと何考えてんの、せめてこう影から隠れて覗くとかさ…なんかあるでしょ!?」
「まぁまぁ名っち落ち着いて…」


苦笑いを浮かべながら黄瀬が肩に置いた手の甲を捻りあげる。


「あんたも共犯じゃない黄瀬!」
「うっ、スンマセンッス〜。でもオレは青峰っちに無理矢理…」
「「死ね」」
「理不尽!!」


青峰と言葉が重なって、お互いを見つめてうん、と頷いた。


「黄瀬君」
「黒子っち〜二人とも酷いと思わないッスか〜」


泣きながら黒子くんに抱きつこうとするが、スッと避けられて空気とハグしていた。
ハッと吐き捨てるように笑ってやったと同時に黒子くんらしからぬ発言が聞こえて、思考が止まった。


「名さんに気安く触らないで下さい、僕のなんで」
「く、黒子くん!?僕のって…」
「違うんですか」


恥ずかし気もなく、真面目にそう返した黒子くんにこっちが恥ずかしくなる。青峰が茶化してバカの一つ覚えみたいにヒュ〜ヒュ〜言うのがやけに耳につく。…後で殺す。


「名、こう見えても黒子は嫉妬深いからね。精々妬かせないように気を付けるんだよ」


意味深に笑うと、さっと踵をかえし去っていった。いやほんと何しに来た。


「赤司くんまで何言ってんの!?私黒子くんと付き合うなんて一言も…」
「え、そうなんですか」
「う、うん」
「ではもう一度。好きです、付き合っ」
「ちょーちょちょちょちょ!なんでもっかい告白!?」
「きちんといいお返事を頂こうと」
「“いい”って何!?なんでOKすること前提!?」
「断るんですか」
「え、う…うーん…?」


改めて考えてみると、私はどう返事をするつもりだったんだろうか。唸りながら何度もポーズを変え悩んでいるとすっとんきょうな声がした。


「紫原からのあだ名ちーん、早く返事しちゃってよ〜。新しいお菓子取りに行きたい」
「いや、勝手に行けよ」
「あ、そうか。赤ちん待って〜」


ポンと手のひらに拳を乗せると、赤司の背中を追いかけた。

二人目撃退成功。


「ところで、緑間くんは何をされているんですか。どう考えてもこういうのに面白がって参加するタイプじゃないでしょ」
「おっ俺は別に、青峰に今後のためになるからと言われてのこのこ着いてきた訳ではないのだよ!」
「説明ありがと。正直この状況はなんの役にも立たないと思いますのでお帰り下さいませ」


緑間くんの背中を押して二人の後を追わせる。ぎこちなく歩きながらこちらをチラチラと気にする姿を見て、あの大男を可愛いだなんて感じるだなんて


「ダメです」
「!?」
「僕以外の男に可愛いだなんて、許しません」
「えぇ!!黒子くん可愛いって思われたいの!?」
「いえ、そういう訳ではないのですが」


私達の会話を聞いて、後ろで青峰と黄瀬が笑いを堪えている。


「てかどうせこんなしょうもない事考えたの青峰なんでしょ!」
「なんでんなこと分かんだよ、赤司とかかもしんねぇだろが!」
「んなわけあるか!あの赤司くんがこんなバカなことするわけないじゃん!どうせ青峰のバカに“ふっ、たまにはこんなことに付き合うのもいいか”と言って着いてきただけでしょうが!」
「名っちなんで分かるんスか!」
「「黙れ」」
「えええええええ」


ガックリとうなだれる黄瀬。


「だいたいあんたらバスケ部でしょ!バスケしてきなさいよ!バスケバカどもめ」
「…わーったよ!行きゃいいんだろ行きゃ、オラ立て黄瀬」
「…死ね…黙れ…死ね…黙れ…死ね…黙れ…」


うわ言でそう繰り返す黄瀬の肩を抱いて最後の邪魔な二人も消えた。


「名さん」
「わぁっ、黒子くん」
「返事、聞かせて下さい」
「え…あ、えと…」
「これからは恋人としてよろしくお願いします」
「…………は?」
「だって名さん、僕のこと好きですよね?」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」


黒子くんって普段ほけ〜っとしてるのに、言動ははっきりしていて、こういう時反応に困る。

でも、嬉しいから…いいか。


「しょうがない!そこまで言うなら付き合ってあげてもいいよ」
「クスッ…はい、ありがとうございます」


私の照れ隠しも、黒子くんは見抜いているみたいだ。


「あっ、バカ、黄瀬押すなっ」
「いや押してんのは紫原っち…ってか重いッス」
「うおっ」


体育館の角を見ると、先ほどまでここにいたやつらがドサドサと倒れ込んできた。


「いや、名これはその」
「名っちスンマセンッス〜!!」
「俺はこいつらとは違うのだよ」
「あ、ミドちんずるい〜」
「てめぇら…歯ぁくいしばれぇーーーー!!!」
「ぎゃああああああああ」


黒子は断末魔を聞きながら、近寄って来た人物に意識を向けると、赤司が不敵な笑みを浮かべていた。


「名がいらなくなったらいつでも俺に寄越してくれて構わないぞ」
「…すみません。いくら赤司くんでも、名さんだけは絶対に」










譲りません


(そうか、それは残念だ)
(狙ってたんですか)
(さぁ…どうだろうね?)
(…赤司くんには細心の注意を払うことにします)
(名は無防備だから大変だな)
(…)
(何話してたの?)
(何でもないです)
(?)

20120813 →あとがき
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