嗚呼、青い空がにくたらしい。
「あっづいー!!」
夏も終わりが近づいているというのに、湿気のせいもあり、かなり蒸し暑い今日このごろ。
どうして今日という日はこんなにも暑いのか、そしてどうして奴らはあんなに元気なのか。
「紫苑もこっちおいでちやー!
縁側より今は日陰のほーが涼しいき!」
「ヅラァ、お前今日くらいヅラとったらどーだァ?頭むれるだろ」
「ヅラじゃない桂だ!そしてこれは地毛だ、断じて桂なんぞではない!あれ?」
「ヅラ、言葉ごっちゃごっちゃになってるぜよ。何言いゆーか分からんきに」
「桂だのカツラだのヅラだの面倒くせぇ。どれも一緒だろ」
「いや全然違うからね?!」
「ぷぷっ。てかお前そんな必死になっちゃってさ〜、実はまじでヅラなんじゃねーの?ぷぷぷ」
「銀時ィィィィ!」
───なんであんたらはそんなに元気なの。私にもその元気わけてくれ。
そう思いながらしばらくぼーっと四人を見ていたが、突然聞こえたよっこらしょという声に従って隣を見ると、いつのまにか銀ちゃんが座っていた。…よっこらしょってオッサンか。
「銀ちゃんいつの間に……ってゆうかみんなはどうしたの?」
「ん」
銀ちゃんが指をさした先を見ると、そこに居たのは取っ組み合いを始めた小太郎と晋助、それを止めようとしている辰っちゃんだった。
というかアレは違うね。
止めようとしてるってゆうより辰っちゃんは爆笑してるだけだわ。
「……、いいの?アレ」
「いーんだよ。んっとにあいつ等ガキだから困っちまうぜ」
「さっきのさっきまで他の誰よりも腹立つ顔で小太郎おちょくってたのは誰だコラ」
どこか偉そうな顔をしている銀ちゃんにそうつっこむが、本人はもうすでに遠くを見て「糖分ー」とか言ってる。
人の話聞け天パこのやろー。
「つーか眠みぃー。紫苑、膝かせ膝」
「ええ、やだよ暑いのに!
ってだから人の話聞けェェェ!!」
そんな私の意見はまったく無視で勝手に眠りにつく天パ。
くそう、ただでさえ暑いのに。
………いや、それよりも。
(幸せそーな顔)
数日前、戦場で会った人物とはまるで別人のようだ。
こんな顔を見ていられるなら、案外この状況も悪くはないのかもしれない。
「…なんて、私も馬鹿だねー」
単純だと笑われても、やっぱり私はみんなが笑っているのを見られれば幸せだから。
思わず笑顔で銀ちゃんのきれいな銀髪をいじっていると、銀ちゃんがふいに身じろぎをした。
そのせいで仰向けになった銀ちゃんと自然に向かい合うような体制になり、思わずその寝顔をじっと見つめてしまう。
(…銀ちゃんってこんな顔だっけ?)
ふとそう思ってしまった。幼いころからずっと一緒に居たからそんなに気にしていなかったけれど、彼がもつ綺麗なものはその魂や髪色だけではなかったらしい。
(案外きれーな顔して…って何考えてんの私!相手はあの銀ちゃんだよ?幼なじみの坂田銀時!)
そう自分に言い聞かせるが一度意識してしまえば鼓動は速まるばかり。
だんだんと顔に集まる熱にわけも分からず、あたふたし始めた時だった。
ついさきほどまで響いていた喧騒が何の前ぶれもなく、しんと止んだのだ。
どうしたのかと顔をあげると、表情を引きつらせている三人の視線が私に集中していた。
…否、銀ちゃんに集中していた。
「?、みんなどうし「「「天パァァァァ!!!」」」わあっ!」
そう叫ぶやいなや、あっとゆうまに私の膝の上で眠っていた銀ちゃんを蹴り落とした三人。
縁側に座っていたから無残にも顔面から庭に落ちた銀ちゃん(ものすごく痛そう)は当然跳ね起きた。
「痛ってェェェよ!何してくれちゃってんのお前等?!銀さんちょっと泣いちゃったよ?!」
「黙れ銀時、紫苑の膝の上で気持ちよさそーに昼寝なんぞしよって…。
羨ましい事この上ないわっ!!」
「あはははははー金時ぃ、抜け駆けは許さんぜよー」
「…覚悟はできてんだろーなァ?」
「だから銀時だっつってんだろーが!!
って、ちょ、オイ。待て待て待て!
お前ら目が据わって…っぎゃあぁあ!」
あおぞらのはがん
人はこんな"どこにでもある日常"を"幸せ"と呼ぶのだろう。
そう言って誰かが微笑んだ。
「今日もみんな元気でなによりだね!」
「アッハッハ!紫苑、一名瀕死じゃ」
「銀ちゃんんんんんん!!!!」