それから暫くして、紫苑はもうかなり動けるようになり、軽い鍛錬にも参加できるようになった頃のことだった。


「やー、紫苑も元気になってまっことよかったぜお!アッハッハ!」

「これも辰っちゃんたちが看病してくれたおかげだよ。これからたくさん動いて早く元通り戦えるよーになるから待っててね!」

「ほーかほーか!なら丁度いい!今日の夜、息抜きにみんなで肝試しでもしようと思ってたんじゃがその調子なら紫苑も参加で決定じゃな!いやーよかった!」

「あれ?あいたたたたたた、なんか突然お腹が痛くなってきたような気がする。
ごめんね辰っちゃん。残念だけど私は不参加ってことでよろしくお願いしまーっす」


"肝試し"と聞いたとたんに顔を真っ青にさせた紫苑は踵を返すとそそくさと立ち去ろうとした。のだが、


ガシィ


にやりと青色の双眼をぎらつかせる辰馬がそれを許さなかった。


「……………」

「鍛錬に出れるくらい元気があるなら夜外を歩くくらいどーってことないぜお。それに、おんしが居らんとまっっったく盛り上がらん!!男子だけでする肝試しほどつまらんもんはないき!」

「なら最初っからそんなもんしようとすんなよォォ!てか息抜きに肝試しって何?それ絶対息抜きになんないよね!」

「アッハッハ!夜が楽しみじゃのー!」

「え、ちょマジでか」










一方その頃銀時は桂と高杉と共に居た。


「おいヅラぁ、いきなり呼び出して何か用ですかコノヤロー。おれァ今からお昼寝タイムなんですけどー」

「ヅラじゃない桂だ。いや坂本から言伝を頼まれてな。今夜みんなで肝試しをするからお前らに伝えおいてくれ、と」

「は、はァァァ?!そんなん誰が行くかっつの!が、ガキの遊びにつきあってられるほどひひひ暇じゃねーんだよ!」

「クク…銀時ィ、声が上擦ってるぜ?」

「るっせえ!とにかく俺は行かねーぞ!
なんで好き好んでそんな面倒くせぇことしなくちゃならねーんだっつーの!」

「ふん。……ヅラ、俺もパス」

「おい高杉、それならお前も人のことを言えぬのではないのか?」

「俺はこいつと違って幽霊うんぬんなんざ怖くねーんだよ。見えたことねーし、んなもん見えたところで怖かねえ。ただ面倒くせェだけだ」


それを聞いた桂はため息をついた。


「……………やっぱりか」

「「あぁ?」」

「いや、お前らのことだからな。どうせ肝試しになど行かぬと言うだろうと思っていた」

「なら誘うなっつーの。じゃ、俺部屋戻るからな。」

「俺も」


そういって部屋を出ていこうとする二人。すると後ろで桂が小さく、しかし確実に銀時たちに聞こえる声で呟いた。


「本当に残念だな。しかたがないから肝試しは俺と坂本と紫苑で行くことにしよう」


その言葉を聞いて、瞬時に二人が振り返ったのはいうまでもない。


「ちょい待て、紫苑はそーゆうやつ駄目だったろ?行くわけねえじゃん!」

「いやそれがな。辰馬が「なにが何でも紫苑は連れて行くぜお!」とはりきっておってな…。ああいう時のあいつに出来ないことなどないのはお前等とて知っておるだろう?」


そう、坂本辰馬はやると決めたらには何があろうとも必ずやりとげる男。

それは確かに周囲も承知の事実。

ま、お前らには関係のない話だがな。と言って部屋を出て行こうとする桂の肩をがしりと掴んだのは銀時と高杉だった。


「「俺もいく」」

「は?さっきは行かないと…──」

「「行 く!」」

「……わかったわかった。では辰馬にはそう伝えておこう」

その時、銀時と高杉は脳内でもんもんと自分たちの考えを駆け巡らせていた。


(紫苑は怖がりだっつーのに、ほっとけるわけねーだろうが!)

(辰馬の野郎抜け駆けしようってかァ?冗談じゃねェ、んなこたぁさせねえよ)

((つーかあの毛玉潰す!))


何か似たような表情をして、息もつかぬ間に部屋を後にする銀時と高杉を、ふと笑ったのは先ほどまで静かに二人を見ていた桂だった。


「こう言えばあいつ等は必ず来る…か。
さすがだな坂本、その通りだったぞ」


笑みはそのままに、これを辰馬に伝えるべく、すぐに桂も部屋から出ていった。


いきぬきいきぬき
     っはっは!



「お前の言ったとおりだったぞ坂本」

「あっはっは!そりゃよかったぜお!
まっことあの二人は紫苑のことが大好きじゃのう」

「む、それなら俺だって紫苑のことは好きだぞ?」

「んー、おんしのそれとあの二人のそれはちっくと違うき」

「?」

「とにかく夜が楽しみぜお!」



 
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