「まあそんなこんなで、晋助はどこだ?!見つけだして猫ちゃんの名前考えさせよう大作戦(?)はじまりはじまり〜」

「ぐだぐだ感満点の切り出しだなオイ。
なんで作戦名に(?)ついてんだよ無駄になげぇし」

「細かいこと言ってるとモテないよー銀ちゃん」

「おまっ、俺がモテないのはこの天然パーマのせいだっつーの。俺がさらさらストレートヘアだったらアレだぞ、すげーことになってんぞ」

「はいはい」


廊下を歩きながら話をしているのは銀時と紫苑。高杉を見つけるべく、とりあえず高杉の部屋へ向かっているところだ。


「晋助考えてくれるかなー」

「いやそれは無理だろーな。あいつあの猫置くときから反対だったじゃん」

「そうだけどさ〜……」

「ってか肝心の猫はどこに居んの?」

「やー分からん、あの子は好きな時に好きなよーに行動してるからね」

「ったく、自由なもんで」

「当たり前だよ猫だもん」

「…………そりゃそーだわな。」


そんな風にして歩いていればいつの間にか晋助の部屋の前まで来ていた二人。そして紫苑は何の躊躇もなく、襖に手をかけた。


「晋助居るー?入るよー」

「って、オイ紫苑!
いきなり入ったら殺されるぞ!」

「へ?なんで?」

「俺このまえ今みてぇに部屋入ったら、その瞬間に刀飛んできたもの!「返事する前に勝手に入んな」っつってよー。俺だったから避けれたものの、他のやつだったらさっくり死んでたよアレは」

「大丈夫大丈夫、晋助も銀ちゃんだって分かってて刀投げたんだと思うから」

「余計たち悪いわァァァ!!
何なの?俺だったら死んでもいいの?
俺あいつに何かした?」

「銀ちゃん強いからちゃんと避けれるって信用されてるんだよ!多分」

「んな信用いらねェェェェ!」

「もー…。いいから行くよ?」


紫苑がいつものように勢い良く襖を開けると、その途端に銀時が叫ぶ。


「っだからあぶねぇって!」

「ありゃ、居ないや」

「……え、」


高杉の部屋はもぬけの殻だった。

必要最低限の家具以外に三味線しか置いていない彼の部屋は妙にさっぱりしていて、ふわりと鼻をかすめるのは煙管の香りと微かな部屋主の香りだけ。


「うーん…。どこに居るんだろ」

「ここ以外となると縁側か?けどまだ真っ昼間だし、それはねぇよなあ…」


高杉が自分の部屋以外でよく居る場所。
それは拠点内にある縁側なのだが大抵の場合夜の話であって、高杉はそこでの晩酌を好んでいるのだ。

よってこんな昼間に居るとは思えないし、何より1人でそんなところに居る理由がないと思うのだが………


「けどそこ以外思い浮かばないね、一応行ってみようか」


2人は縁側へと向かうことにした。







縁側に来てみると庭でしゃがみこんでいる高杉をすぐに見つけることかできた。

まさか本当に居るとは思わなかったのだが、喜んで声をかけようとした紫苑を銀時が止める。


「どーしたの銀ちゃん?」

「シッ!………あいつ何やってんだ?」


先ほどから高杉はしゃがみこんで何かしているようなのだが、紫苑と銀時の方向からは背中しか見えない。


「そーいえば、ちょっと気になるね。……気配消して回り込んでみよっか?」


紫苑が銀時にニッと笑うと銀時も同じように笑う。それはまるで悪戯をしかけようとする子供のような笑顔で、二人は静かに高杉に近づいていった。そろりそろりと近づくと段々と視界に入ってくる高杉の様子。そしてその足元にある黒い何か。……………黒い?


「ああ!!」


突然声を上げた紫苑に驚いたのは銀時だけでなく高杉もまた然り。

すぐさま立ち上がり振り向く、高杉の足元には楽しそうに彼にじゃれつく黒い何か……あの子猫が居た。そしてしばしの沈黙を破ったのは銀時の爆笑となる。


「ギャハハハ!高杉ィ、おまえが猫のあいっあいてをっ!やっべ、腹いてえ!」

「……紫苑、コイツ斬っていいか?」

「気持ちはすっごく分かるけどダメ」

「ぎゃっはっはっはっ!」

―――――――プチ

「(あ、今なんか切れた)」

「仕方ねェ……なら四分の三殺しで我慢することにするぜェ……」


ぴきぴきと青筋を浮かべ、すらりと刀を抜く高杉を見てそれをなだめる紫苑と、漸く笑うのを止める銀時。空気を変えなければと紫苑が口早に言葉を紡ぐ。


「あ、あのね!私たち晋助を探してたんだよっ」

「あァ?何か用かよ」


やっと刀をしまってくれた高杉に内心ほっとしながらも紫苑は続ける。


「うん。その子の名前ね、みんなで話しあってたんだけどいいのが出てこなくって……。晋助ならいい案持ってないかなって思ったの!」


その子、と言いながら紫苑が子猫を指差すと、それを見て大きなため息をつく高杉。


「んなことかよ……………」

「えええ!んなことって…」

「…………クロ…」

「え?」

「……もう決まってんだよ。こいつの名前はクロだ」

「えええ!いっ、いつ決めたの?!」

「こいつがここに来た日。俺ぁその日からずっとそう呼んでるぜェ?」

「オイィィィ!!名前付けてたんなら教えてよね!だから最近猫ちゃんって呼んでも反応しなかったんだぁ……」

「てか俺はおまえが名前つけてたことにすげーびびったわ」

「ふん……」

「つーかなんでクロ?まぁたしかに見た目真っ黒だけどさ、おまえにしちゃあ単純すぎねー?」

「……なんでもいいだろーが」

「クロ……クロかあ……かわいい名前だね。おいでクロ!」


名前を呼ばれてぴょこぴょこと紫苑に寄っていくクロ。それを見て喜ぶ紫苑も同じように跳ねる。


「銀ちゃんんんん!!どーしようこのかわいい生き物!」

「(おめーもだけだどなコノヤロー)あーハイハイ。名前も決まったことだしよかったじゃねーか。そいつ……クロも連れて桂達んとこに報告でもしてこいよ」

「うんっ、いってくるね!」


そういうなりあっという間にクロを連れて行ってしまう紫苑に高杉がくつくつと笑みを零す。


「クックッ、……なぁ銀時ィ」

「ん?」

「クロって名前なのは見た目が黒いからじゃねーんだよ」

「あ?じゃあ何なんだよ」

「クロッカスって名の花は知ってるか」

「花ァ?」

「そうだ。あの猫は元々うちの蝶々さんが拾ってきたもんだからなァ。…………あの猫が、あいつの羽休め場所になるように」


なんせ俺達は花なんてガラじゃねェからなと言って、もう一度小さく笑う高杉に、銀時も鼻を鳴らして、違えねぇと口角を上げた。


たまにはねを
     やすめよう


クロッカスの花言葉
"あなたをまっています"



「それにしてもクロは晋助が大好きよね。晋助見つけた途端に追いかけちゃうもん。晋助ばっかりずるいよー、なんでそんなに懐かれてるの?」

「んなもんしらねーよ」

「高杉が名付け親みたいなものだからではないのか?それにクロはここにおるみんなに懐いているぞ。まあ紫苑と高杉には特別懐いておるようだが…」

「アッハッハッハ!高杉が好かれるのは高杉が猫そっくりだからじゃなか?」

「晋助が猫そっくり?」

「そーじゃ!自由で気まぐれで神出鬼没。しかも真っ黒ときたらもう高杉そのまんまじゃ!」

「うっわマジでだ!いっそのことこの子「クロ」から「晋ちゃん」に改名しちゃおっか?」

「一度でもその名前で猫呼んでみろ…。
叩っ斬ってやらァ」

「ひいっ、ごめんなさい冗談です!!」



 
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