人気もない道を子供ひとり抱えて歩く。気づけば陽も傾き、辺りは紅に染まりつつあった。
結構の距離を歩いてきたはずだが疲れは不思議とない。というのも少女の身体は抱えているのを忘れてしまうほどに軽かったからだろう。
疑問ばかりでたまらない。
こいつはどこでどのような生活を送ってきたのか。そもそも、こいつは何者なのか。次に目を覚ました時はきちんと語るだろうか。
(いやそれ以前に、襲いかかってきてもおかしくはねえか)
恐れを抱くまでもないが気を抜くつもりもない。なにせ、事情は知らないし興味もないが路地の惨劇を引き起こしたのはこいつに違いないからだ。
そう思いながら江戸の端にひっそりと佇んでいる小さな宿屋に足を踏み入れた。
部屋の中で少女を寝かす。夕日色に染まった頬に、思わず懐かしさが溢れた。
嗚呼、いらいらする。
「… んん、」
「!」
「………、…すう」
「………」
俺が眠らせたというのに、今や勝手に熟睡してるじゃねえか。
もどかしいなら叩き起こせばいいだけの話。なのにどうして。起きるまでの間でいい。まだこの寝顔を見ていたいと思う俺は、
「……どうかしてる」