とても不思議な人と会った。
その人は今まで会ってきた沢山の人たちとはどこか違くて、寂しそうにわたしを見つめては沢山の質問をしてきた。
しんすけっていう名前の男のひと。
ご飯をくれた。
わたしの名前を知ってた。
へたくそに笑ってた。
それに、わたしの気持ちがまるで分かるみたいな。
そんな不思議なひとだった。


「…ただいまあ」
「あれ?おはようひいろ」
「わああああ!」
「あははは、朝から煩いなあ」
「おっう、う、おは よ」
「うん。きみが早起きなんて珍しいね、なにかあったの?」
「お、にいちゃんこそ、起きてるなんて思わなかった。びっくりした」
「そっか。驚かせてごめんね」
「ううん!」


謝りながら頭を撫でてくれる。
びっくりしたけど嬉しいなあ。
あったかくて、安心する。

わたしはこのひとが好き。


(…あ)


さっきのひとも、あったかかったな。
撫でてくれてはいないけど、ぎゅうってしてくれたあのひと。
おにいちゃんとはなんだかとても、違うけど。

まるでそっくりにほっとする。


「…で、どうしてこんな早くに起きたの?お腹でもすいた?」
「あ、えと。ちがう。あのね…」
「あ!」
「!」
「ごめんひいろ、俺仕事で京ってとこに行かないとだったんだ。早く行かないとまた獲物横取りされちゃうから、話しはまた帰った時にゆっくり聞くよ。ひいろもその話しだろ?」


仕事…。あ!そうだわたし、それで江戸に行ってたんだ。すこしだけ忘れてた。
嬉しいことだったはずなのに。


「じゃあ行くね、またすぐ帰ってくるから」
「うん、行ってらっしゃい」
「約束ちゃんと覚えてる?」
「うん!大丈夫だよ!“夜は外にでない“」
「“いただきますとごちそうさま“は?」
「ちゃんと言う!」
「あはは、ひいろはいいこだね」
「うんっ!いいこにしてるよ!」
「じゃあ最後に一番たいせつな約束、覚えてる?」
「覚えてる!」


おにいちゃんはいつも私に優しくしてくれる。
いつも笑って、わたしを撫でてくれる。
がんばったら褒めてくれる。

誰よりも、わたしのそばに居てくれる。


「“俺以外の人の前で、笑ったり泣いたりしない“」


そんなおにいちゃんがわたしは、大好きだ。



 
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