幸せには程遠いこの世界で、私を照らしてくれる光はずっと私のそばに居てくれていた。

そう思うだけで、私はきっと、救われていたの。


「……もう駄目だ」


そんな仲間の呟きを聞くようになったのは最近のことじゃない。
もう随分と前から、…もしかすると私たちが戦争に参加する以前からそんな呟きはあったのかもしれない。

日に日に悪化する戦況、次々と倒れてゆく仲間たち。絶望に打ちひしがれる者は増えてゆく一方で、戦争はまだ続く。

そして私自身も、それを冷静に見ていられるほど強くなんてなかった。


「そんなこと言わないでよ!」
「っ、す、すみませ…」
「私たちがそんなこと言ってたって何にも変わらないっ!それに…!」
「おい!何やってんだ!」


怒鳴りあげた私の言葉を遮って、私の腕を掴んだのは晋助だった。
目があった瞬間、彼の瞳が揺れる。


(私、そんなにひどい顔してるのかな)


そんなことを考えてほんの少しだけ冷静さを取り戻せたような気がした。


「………晋助」
「…ちょっと来い」


そのまま腕を引っ張られて、向かう先は静まり返ったひとつの和室。
誰もいないそこはやけに肌寒く、乾いた空気は埃っぽかった。


「お前なにやってんだ」
「なにって、………」
「あんな事くれえで大声あげやがって…ただでさえ戦後でみんな疲れきってんだ。あんま追い討ちかけるようなことしてんじゃねーよ」
「私はただ…!」
「なんだよ」
「………」
「?」
「…………ううん、なんでもない。私も疲れてるみたいだね。今度から気をつけるから、…ごめん」
「あ?ちょっと待て」


先に倒れたみんなに顔向けできないと、そう言いかけてやっぱり止めた。
晋助の声に応えるのが嫌だと生まれて初めてそう思った。


「……ごめん」


私はいつの日からか最初の目的すら忘れて過去ばかりに目を向けていたんだ。晋助たちのそばに居ながら、晋助たちとは違うところを見て戦っていた。

それが無性に悲しくて、怖かった。


(──私はもう、)


護るべき己の魂すら無くしてしまったのかもしれない。



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