静寂があたりを包み込む。見つめ合う瞳は互いに一瞬たりとも逸らされることはない。
見慣れた瞳が自分だけを映しているのを見て、少女は口角を上げずにはいられなかった。

「しんすけ」

音のない世界を砕いたのは少女の一言だった。だがしかしその声はすぐに男の唇によって食べられる。ぱくり。

「………」
「………」

重なる温もり。それでも互いにはっきりと目を開いて、瞼を閉じる素振りすら見せない。
至極至近距離でじっと見つめ合う二人。しかし男が少女に送る視線に愛なんてものは微塵も無かった。

「…ねえ、あんたは私に嫉妬してるだけでしょう?」
「………」
「欲しいのは私なんかじゃないくせに」
「だから何だ」
「こんなことしたって銀時はあんたのもんにはならないんだよ」

くつくつと男が笑いだす。少女は無表情のままそれを見ている。冷たい床の上で男は少女に言葉を投げた。

「よく解ってんじゃねえか」
「…だって私も一緒だもん」

少女は密かに笑みを零した。
ようやく少女が本当に欲しかったものを手に入れた瞬間だった。





銀時→少女→高杉→銀時


back

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -