「…いまなんて?」
「だからァ、俺高校行かない」
「意味分かんないんだけど」
「分かるだろこれくらい」
「…それで冗談言ってるつもりなの?ぜんっぜん笑えない」
「冗談じゃねえよ」
今私の目の前であっけらかんとした表情で信じられない言葉を吐き出したのは坂田銀時という名の少年だ。
「…なんて顔してんだよ」
「だって…、なんで?」
「………」
「意味、わかんない」
私だって高校に行かないということが信じられないわけじゃない。そういう人なら同じ学年に何人もいる。私が信じられないのは目の前のこいつが進学しないという事実にだ。
「だってあんた、いっつも学年上位だったじゃんか」
「んなこと別に関係ねーだろ」
「それに、ずっと…」
「あ?」
「ずっと学校の先生になりたかったんじゃないの…?」
そう言った瞬間、銀時の目が一瞬揺らいだように見えた。
その瞳の奥に誰が映っているのか、わたしは知らない。
「…………俺は、」
back