あのひとの声が聞こえたような気がして振り返っては見たものの、やっぱりそこには何もなかった。
そうだよね、ありえないよね。
だってここはあの人が居るにはあまりにも相応しない場所。
日の光すら届かない、戦場の片隅で。

「…みんな、ごめん」

そこには護れなかった仲間たちが何人も地に伏していた。
私がその場にどれほど居たかはわからない。ただ私はひたすらに、さきほど聞こえた気がしたあの声を何度も何度も脳内で再生していた。

それはいつの間にかそばに立っていた晋助に声をかけられるまで彼の存在にすら気づけなかったほどに。

「何やってんだ」
「…晋助」
「帰るぞ」

その言葉に思わず笑ってしまった私の顔を驚いたように目を大きくして見つめる晋助。
どうしたのかと尋ねる前に口を開いたのは晋助の方だった。

「……なんで泣いてんだ」
「は?泣いてないし」
「……あっそ」
「うん、」

ぐりぐりと髪の毛をめちゃくちゃにして頭を撫でつける彼にいつもなら一言文句でも言っているところだが、止めておこう。

なんだか今のは少しだけ、ほんの少しだけ、ほっとしたから。

「さあ帰りましょう、みんなが待ってますよ」


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