「おいっ!」


声と、肩を掴んできた手がわたしをくるりと後ろに振り向かせた。
わたしのことが嫌なのに、この子はわたしになんの躊躇もなく触れるんだなあ。

そういえばひとに触られたのは随分と久しぶりな気がする。
忘れてた、ひとって、ひとの手ってあったかい。


「………」
「…………」
「なあに」
「っ、いや…、なんでおれ…」


わたしの肩から手をはなして、首を傾げながらじいっと手を見つめるその子。
表情がころころ変わる。
とても不思議な子だと思った。


「ぐううう」
「…へ」
「あ」


ふいにわたしのお腹の虫が鳴いた。
目を丸くしてわたしの方をみるその子。


「……はらへってんのか」
「んん、でもまだへーきだよ」
「…やるよ」
「?」
「さっきとった、にぎりめし」
「ほんと!……あ、でも」
「?なんだよ、」
「きみのぶんが無くなっちゃうよ」
「おれはべつに食わなくても「ぐうう」
「…………」
「……………」
「はんぶんこにしよう!」


その子が取り出したおにぎりをもらって、はんぶんに割る。
だけど綺麗にはんぶんにはならなかったから、すこおしだけ大きいほうをその子にあげた。
なぜか分からないけど、わたしはなんだかもう胸がいっぱいで、お腹がすいてることなんて忘れてしまいそうだった。

いまわたし多分、わらってる気がする。


「わたし誰かとごはん食べるの、すごく懐かしいなあ」
「!」
「どうしたの?」
「……いや、べつに」
「そっかあ」
「おれは、はんぶんことか、初めてだ」


そう言ったこの子と、わたし。
おにぎりをはんぶんこずつもって口にした、のと、ほとんど同時だったと思う。

だれかの手がまるで撫でるようにやさしく、わたし達のあたまの上に置かれた。


「        」


空は雲で隠れていたはずなのに、ふいにおひさまのにおいがした気がした。


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