「……………お前」
「うん」
「お前のも、目のいろ、」
「えへへーきみのと似てるでしょ」
「似てる、同じあか色だ。初めてだ」
「うーん?同じかなあ。違うと思う」
「?」
「わたしのもあか色だけど、きみのは違うね。とてもきれいだもん」


わたしは今まで沢山のあか色を見てきたけれど、目の前の子の瞳はその中でも特別にきれいなあかに見えた。ぱちぱちと燃えるあかより、西の空に沈んでくあかより、ずっとずっと綺麗。


「お…おい!」
「んー?」
「ちけえよ!」
「だってもっとよく見たい」
「……!」
「ああっ、目え閉じないで!」


隠れちゃったあか色もっと見ていたくて思わずこの子のほっぺたを手ではさもうとした、とたん、勢いあまってべちんと叩いてしまった。


「いっ、てえな!」
「う…え、ごめ、ごめん?」
「もう離せよっ」
「あ」


べりっと剥がされた両手が寂しかった。怒ってるかなあとこの子にちらりと目を向けてみると涙目になった少年がひとり。
わたしはびっくりした。


「い、痛くしてごめんね!大丈夫?」
「痛くねえよこのくらい」
「でも…でも泣いて」
「かってに出てきただけだ!もうほっとけよお前!なんなんだよ!お前といるとなんかむずむずして嫌なかんじがするんだ」
「……わかった、ごめん」
「…え、」


嫌なかんじがするって。この子に嫌われちゃった。わたしはわたしを嫌うひとの近くにいちゃ駄目だから、はやくどこかに行かなくちゃ、怒らせたらいけないんだ。

でもどうして、ひとに嫌われるのには慣れっこなはずなのに。
胸がどきどき、煩い。どきどきがあんまり早くて、だんだん痛くなってきた。


「う…」



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