わたしが世界に興味をなくしたのはいつだったっけ。わたしを棄てた神様はいま生きてるかどうかさえ分からない。さてはて、ここからどう歩いてゆこうか。生きるとはなんだろうか。歩みを止めたらそれはもう死んだも同然なのだろうか。


「おなかがすいたなあ」


どこかで学んだ言葉でわたしはわたしの思いを紡いでみた。それを聞いているのはわたしの耳だけ。まっしろな空には鈍色の雲がふわふわ浮かんでいる、あとは…なにもないかな。ついでに足元にあるのはどろんこになったわたしの足と、転がっただれかさんの刀と、そのだれかさん。


神さまはどうして私をこんなところに産み落としたのかなあ。
空を見上げて歩いていたらがつんと音がしてびっくり。なにか蹴った?


「いっ、てえ…!」
「あれれ、ひと?」
「なんだよおまえ!」
「うわあ…でっかい刀」
「……こどもか」
「きみもでしょ」


どうやらわたしが蹴飛ばしてしまったのはしゃがみこんでいて見えなかったこの子の背中だったみたい。
痛そうに背中をさするその子を見て悪いことをしたなあとすこし胸が痛んだ。
よし、今度からは前と空だけじゃなくて地面も見ながら歩こう。


「おまえ、なんでこんな所にいんの」
「え?」
「……もうすぐ暗くなるぞ。家、とかゆうのに帰れば」
「いえ?」
「かえるとこ」
「ほうほう」
「いや…だから」
「でもわたしそれもってない」
「……あ、そ」
「きみは帰らないの?」
「どこに」
「家に」
「んなもんねーし」
「なんだあ、それなら私と一緒だね」
「………」
「ねえねえ、君の名前はなんてゆうの」
「………」
「………あれ、泣いてる?」
「っ、泣いてねえよ!」
「うわ、びっくりしたあ」


俯いているかと思えば、ぎろりとこっちを睨みつけてきたこの子は、この時初めてやっとわたしの方を見てくれた。すると睨むのをやめてほんの少しだけ丸くなる、その瞳。




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