いきなりですが俺、坂田銀時には愛すべき彼女がいます。
万事屋の家事担当である名前こそがその彼女であって、まあ同じ屋根の下で生活しているわけだが。
「銀ちゃん今日なにが食べたいー?」
「あー…、…肉じゃが」
「りょーかい!お肉買ってくるね」
「あ、やっぱ今夜はお前食べ…」
「じゃあ行ってきまーす!」
「…………」
なあ、誰か教えてくれ。
このおいしすぎる環境下でどうして俺たちの関係は発展しないんだ。
いやいや違うよ?別に俺が押してないわけじゃねぇよ?前に不意打ちでちゅーした時にグーパンチされたことがトラウマになってるわけでもねぇよ?
多分あれだ。タイミングがわりぃんだ。
昼間は勿論のこと、夜は夜で神楽がいるから名前も遠慮してんだな。
……そうだよな?
ま、何はともあれタイミングがねぇってんなら作っちまえばいいって話だろ。
「…覚悟しとけよコノヤロー」
今夜こそ俺は真の男になってやる。
***
そうして決戦の夜はついにやってきた。
鼻歌をうたいながらテレビに熱中している名前が俺の目論みに気づくはずもなく、俺はひたすら話し出すタイミングを見計らう。
あ?緊張してる?なわけねえだろ。
これはあくまでも話流されねえよーにタイミングを見計らってるだけだっつの。って、言ってるそばからCMはじまっちまった。
……すーはー、…よし、いける。
「…な、なあ名前」
「んー?」
「実は今日さァ、神楽新八んとこに泊まり行ってんだわ」
「え、そうなの?いーなあー楽しそう、私も行っていい?」
「なんでだァァァ!」
「え、なにいきなり…」
「っと、いや…わりぃ、何でもねえ…」
「?」
いけねぇいけねぇ、思わず机を殴り壊すところだった。
でもおかしいだろ今の話の流れ!
俺たち恋人だよね?普通ならいまの流れだと「あ、そうなんだ。…じゃあ今夜は二人きりだね」みたいな感じになるだろ!なんで「じゃあ私も行こうかな」なんだよ。つまり俺を置いていく気満々じゃねえか。
「…お前は何も思わねーのかよ」
「んー?なんて?」
「せめてこっち向けよ」
「よく聞こえないー」
「だからこっち向けっ、…って…」
なんか俺ばっか意識してんのが正直くやしくて、しかもこっちを見向きもしねぇことに少しむかついて無理やりこっちを向かせてみた。
そしたら名前が予想外にも真っ赤な顔して唇結んでるもんだから、思わず俺まで固まっちまった。
つまりなんだ。
意識してたのは俺だけじゃなかったって、思っちゃってもいーわけ?
「おまえ…顔、真っ赤」
「っ、や!これはちがうよ!ちょっと今日は長風呂しちゃって、それでっ」
「もう風呂上がってから一時間以上経ってんだろ」
「〜っ、えと、あのね、その…」
ますます真っ赤になってくこいつに何て言ってやればいいのかなんて分かんねーまんまなんだけどさ。
もう色々と限界なんで、そろそろ襲っちゃってもいーですか?
そんな彼の事情
「だから…って銀ちゃんどこ行くの!」
「うん、続きは布団の中で聞くわ」
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