「で、でかい………」

刹那の目の前には鬼兵隊の本拠地となる戦艦。前を歩く高杉は悠々とその中に入って行った。

船の大きさに目を丸くしていた刹那もそれに遅れないよう、小走りでその後ろ付いていく。そして船に入ると、すぐさま高杉は誰かを呼んだ。

「おい、来島は居るか」

「はい!お呼びでしょうか晋助様!」

高杉が名を呼ぶと、すぐに現れた彼女。
ピンクのへそ出しミニスカの着物を着ていて金髪の長い髪をサイドで結んでいる美人さんだ。
そんな彼女の容姿に刹那が目を奪われていると高杉が話しかけてきた。

「刹那、今からこいつに付いてけ」

「…………え!あ、はい」

「…晋助様。この娘は何者っスか?女中なら今足りてると思うっスけど……」

「こいつは女中じゃねえ」

「あの、高杉さん?この状況の意味が分からないんですが」

「っ、何がどうであれ晋助様に向かってその態度は許せないっス!」

そう言って突然銃を向けてきた来島に当然驚いた刹那は、反射的に刀に手を添える。が、すぐに冷静になり刀から手を離した。

(そうだ、高杉さんはこの船の総督。つまり此処に居る人達にとって大切な人)

そんな彼に向かって見たこともない女が無礼な物言いをしたのだ。そんな自分を部下が警戒しないわけがない。そう判断した刹那はすぐさま謝罪の意を唱えた。

「あの…、ごめんなさい」

ぱっと両手をあげてそう言えば、すぐに躊躇なく謝罪した刹那に驚いたのか、来島はすぐに銃を降ろした。

「あ……、えと…。こっちこそいきなりすまなかったっス…」

刹那は、来島が少々気まずそうに上目遣いで自分を見ているのを見て、やっぱりこの人は悪い人なんかじゃないと雰囲気で感じ取った。

「────来島」

そんな彼女に高杉が話し出す。

「こいつァ新しい隊士だ」

「!、この娘が隊士っスか?」

「問題はねェよ、こいつぁ女だが腕は立つ。それに一つ空いてた幹部の穴、こいつに埋めさせることにした」

「「はぁ?!」」

「……刹那。なんでお前が驚く?まさかおめェ、ここの女中になるつもりで来たんじゃあるめェ?」

「そりゃそうだけ…、ですけどっ!幹部だなんて聞いてないですよっ、それに来たばかりの私なんかがそんな重役無理に決まってるじゃないですか!」

「本気っスか晋助さま?!」

「あァもちろんだ」

「……分かったっス。そこの娘!ついて来るっス!」

「えぇ!?あ、ちょっと!!」

刹那の声には耳を貸さず、来島は刹那の手を掴むと、ズカズカと廊下を歩いていく。

「そうした方が観察し易いしなァ…、」

残された高杉は誰に言うでもなくぽつりと言葉を零し、二つの背中を見つめる。そして楽しそうにのどを鳴らして笑う彼は自室へと戻っていった。






「ちょ、来島さん!いいんですか!?私幹部なんて絶対無理ですよ!」

それを聞いた来島はやっと刹那の手を離し、まじまじと刹那を見て言った。

「たしかにあんたはどー見ても戦闘要員には見えないっス。けど晋助さまが決めたんならきっと何かあるはずっスよ!私たちはあの人についてくだけっスから…。とにかくあの方が大丈夫って言ったら大丈夫なんっス!」

はっきりとそう言い切った彼女の笑顔からは、本当に高杉を信頼しているということがよく分かる。そしてそのまっすぐな目と笑顔はキラキラしていて、刹那は素直に綺麗だと思った。

「…来島さんかわいい」

「……へ?」

「その笑顔はやばいです反則です!女の私でもときめいちゃいますよ!」

「いっ、いきなり何言ってんスかあんた!そそそんことの言われたの、生まれて初めて、っス…」

「そうなんですか?来島さんすごくきれーなのに」

「あんたいきなり何言って…、てか敬語じゃなくていいっス、それに私のことはまた子でいいっスよ」

「ありがとう、私も刹那がいい」

そう言って嬉しそうに笑う刹那は本当にそこら辺にいる町娘のようで、来島はますます刹那の戦う姿など予想もできなくなる。だが、今はそんなことよりも自分に初めての女友達ができたような感覚に、彼女はどこかむず痒いような、恥ずかしいような、そんな感情に戸惑っていた。

「…じゃ、刹那。船の案内するからついてくるっス」

「うん!よろしくね、また子ちゃん」

これが鬼兵隊の赤い弾丸、来島また子と刹那の出会いであった。

初めましてのがする

懐かしくて愛おしい。


101219 加筆修正



 
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