久方ぶりに晴れ渡った空の下、攘夷志士たち拠点では戦争中にもかかわらず穏やかな空気が流れていた。
そんな中、部屋の中で刀を抱えたまま目をつむっているのは最近巷で白夜叉と謳われている青年、坂田銀時。
彼もまた今日という日を自由に謳歌していた者のひとりだった。
そんな青年のすぐ隣には畳に突っ伏したままの少女がひとり。
「あー、ひま」
「………」
「ぎんときひまー」
「………………」
「ぎーんーとーきゃー!」
「るっせぇえぇえよ糞ガキャア!たまの休みくらい寝かせろよコノヤローが!」
「うお、生きてたの。あまりに反応が無いから死んでたのかと…」
「てめェふざけんな!こっちは半端じゃねえ疲れ溜まってんの!スタミナ馬鹿のお前とは違うの!」
「えへへ」
「褒めてねぇよ!」
頬を染めて頭をかく素振りを見せる刹那に銀時は怒鳴る、が、そんなことは気にも止めない様子の彼女はふたたび畳へとその身を投げた。
「だって戦が無いとやることないもん。早くまた始まんないかな」
「お前なぁ…あんま滅多なこと言うんじゃねえよ。俺の前でならいいけど、ピリピリしてるやつだって居るんだぞ?んなこと聞かれたら何て言われるか…」
「いーいよ、どーでも。
わたし銀時たち以外にならどんな風に思われようが知ったこっちゃないもん」
「お前強いよな、そーゆうとこ」
「ふ、世界観が狭いとも言う」
「誰に言われたんだよそれ」
「しんすけ」
「あー、あいつらしいな」
「うん。でもそのとーりだよ」
そう言ってむくりと起き上がった少女の顔にはくっきりとした強気な笑みが浮かべられていた。
「あんた達がわたしを拾ってくれたあの日から、私の世界なんてそんなもんなんだよ」
「なにしてんだお前」
「……別になにも」
「こんな所におるのは危ないろー、はよう家に帰るちや」
「……帰るところなんてない。
家族みんな天人に殺された」
「……そうか、」
「だったら俺たちと来るか?」
「なっ、銀時!」
「そのかわり今よりずっと危険だし、辛ぇぞ。それでもいいってんなら……」
「一緒に居ても、いいの?」
「おう。…お前、名前は?」
「私の、名前は──……」
「………そんなもんだよ」
「そんなもんか」
「だから早く強くなりたいの。銀時たちを護れるくらいに、強く」
「…ふん、俺たちを護るなんざァおめぇにゃ百年はえーよ」
「な、なんだとー?!」
「ぐー…」
「おいいいい!起きろ天パ!
そこまで言うなら勝負だ!」
「すかー…」
「ぎんときー!!」
ふたたび居眠りをはじめた銀時が刹那に見えないように小さく微笑んだことには誰も気づかない。
そうしてまた一日は過ぎ、いずれ彼らは戦渦へと旅立ってゆく。
強さと代償に傷を抱え込む、そんな日々が再びはじまる。
けれどせめて、その時までは
とある休息日和には
こうした時間を謳歌しよう。
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