「ふふふんふんふん」

「…………」

「ふんふふふーん、ふん」

「……おい」

「ふふ、ふふふん、ふふー」

「おいコラ」

「え?わたしですか」

「……てめぇそりゃ何だ?」

「そ、それって何ですか?」

「その鼻歌はまさか鼻歌だとか言うんじゃねぇだろうなァ…?」

「晋助さん自分で鼻歌って言ってるじゃないですか!そうですよ鼻歌ですよ、それがどうかしたんですか?」

「……」

「な、なんですか」

「……万斉呼んでこい」

「え?万斉さん?なんで…」

「テメェのその糞音痴、聞いてるだけでイライラすんだよ!
今からテメェの音感鍛え直す!」

「へ?!お、音痴…?」

暫く俯いて肩を震わせているかと思えば、突然ものすごい喧騒で怒鳴りだした高杉に、刹那は訳が分からないとばかりに首を傾げる。

「音痴って…え?わたし?」

「………重傷だな、てめェ」













「………で、拙者を呼んだと」

「そうだ」

「まあ良いが…刹那殿はそこまで音感が無いんでござるか?」

「いや、自分ではそんなことは無いと思うんですけど…」

「聴いてるこっちがイラついて仕方ねェくれえの音痴だぜ」

「晋助さん?!」

「ほう、それは気になるでござる。何か歌ってみてくれぬか?」

「もちろんいいですよ」

「む?晋助、何故耳を塞ぐ」

「いいから黙って聞いてやがれ」

「?では刹那、頼む」

「はーい」















「刹那殿…、これは一体なんという曲でござるか。初めて聞く曲でござる」

「かえるのうたです」

「これはすごい。まったく違う曲に聞こえたでござる…!」

「えへへっ」

「いや誉めてねェよ。照れんな」

「たしかに音感は壊滅的でござるな。まともに聴いていられぬ」

「万斉さん、真顔でそう言われるとさすがの私も傷つきます」

「ともかく人並みを目指すでござるよ、刹那殿」

「………はあい」

三味線と、たどたどしい歌声。

すぐそばでそれに耳を澄ましていたはずの高杉はいつの間にか寝息をたてている。

普段めったに聞くことのない懐かしい童謡につられて部屋に入ってきた来島と武市も、刹那の指導をしはじめた。

歌う彼女はもちろん満面の笑みをたずさえて。

ハミングード

いつまでもこんな穏やかな日々が続くとは限らなくても、今この瞬間が少しでも長く続きますようにって、

そう、願うよ。


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