いつかの夏、戦争に参加した私たち。他人を傷つけ傷つけられて、そうして生きてきたけれど、探してた答えはどこにもなかったね。
本当は分かってた、ここで得るものなんて何もない。失うばかりが事実だということも。
分かっていても、この溢れかえらんばかりの憎悪と乾きを癒やすためには、もうこの道を辿るしかないと思ったの。
でもね、失うばかりだと嘆いたこの場所でいつの間にか得ていたものもあったんだ。
確かにたくさん泣いた、でもたくさん笑った。かけがえのない絆を築くことができた。それは誰にも奪うことなんてできないものだと、信じてやまなかった。
「…………ヅラ」
「伊織…戦争は終わったぞ」
「そっか…やっと…、」
そう言って微笑む彼女は今にも泣き出しそうに瞳を潤めている。
待ちに待った終戦の日がとうとう来たのだと、皆で笑いあえる日が来たのだと、それはそれは希望に満ち溢れた表情で、
「晋助と、銀時は…?」
「……それが…」
「早くあいつらにも伝えてあげなきゃ!きっと、二人ともよろこ「あいつらは去った」
刹那、希望に満ちた未来が崩れ落ちる音がした。
「………、今、なんて」
「あいつらはもう、居ない」
「っ、どうし、て…?」
「生きる道が違うのだ」
「分かんない、分かんないよ」
「………」
「だって銀時が俺たちはずっと仲間だって言った!晋助が居なくなったら許さねえって言った!戦争が終わったら、みんなで辰馬に会いに行こうって…誓ったのに…っ、」
「……」
「なんで、やだよ、やだ…」
「…伊織、」
「っう、あぁあ あぁ」
終戦は私たちから命を奪うことを止めたかわりに、戦争中に得た大切なものをすべて奪い去っていった。
私の生きる礎となっていた彼らごと一つ残らず、すべて。
やはり戦争、戦場は失うばかりの場所。それを知っていたはずなのに叫ばずにはいられなかった私はその時、終戦というものが齎した結果をひたすら憎んだ。
憎んで憎んで、気づいたことがひとつある。それは憎しみの連鎖は終わってなどいなかったということ。戦争参加前から今を繋いだのは他の何者でもなく、その憎悪の鎖であったからだ。
結果、戦争が生んだのは絆でも何でもない、その鎖ひとつのみだったということ。只それだけの話。
時代の火葬地帯にて
千切れたのは絆、途切れぬは憎悪
8月15日 終戦記念日
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