7月7日午後11時38分、屯所の廊下で寝そべるのは沖田総悟。

近藤たちはというと七夕だ何だと言って、現在宴会中である。

七夕と宴会の関係性がいまいち分からない(分かるもなにも関係性などないのだろう)が、それでも理由をつけて酒をのみたがる彼ららしいといえば彼ららしいと言えるだろう。

ぼうとしている沖田の目が中庭に飾られてる笹を映す。なんの気なしに彼がそれに近寄ると、たくさんの短冊が飾られていることに気がついた。

ひとつひとつ読んでいけば実に様々な願いごとたち。


─新しいラケットが欲しいです

「…これぁ山崎に間違いねぇや。つうか何、これが願い事?クリスマスじゃねーっつーの。」


─お妙さんと結婚できますように

「考えるまでもねぇな。」


─マヨリーンと会いたい

「…死ね土方コノヤロー。」

ほかの短冊を見ても各々の願い事を書いているものばかり。さすがの沖田も呆れかえっていた。

「江戸の平和、とかひとつくらいねぇんですかィ…。ん?」

次に目に入ったのは見慣れた文字で書かれた短冊。それはこの真撰組屯所の唯一の女中である伊織の文字だった。しかもどうやら短冊は1つだけではないらしい。


─近藤さんのストーカー行為がおさまりますように

「……無理じゃね?」


─土方さんが禁煙を試みますように

「試みだけでいいのかよ!ハードル低すぎるだろィ!」


─山崎さんがあんパンの呪いから解放されますように

「あんパン…?」


─真選組のみんなが…

「……。」


─新撰組のみんなが怪我しないで、生きて帰ってきますように

「んなこたァ星なんかに願わなくたって…俺が叶えてやるっつーの。……つーか」

そういえば土方や近藤さんに対する願い事はあるのに何で俺のはないんだ、と顔をしかめる沖田。そんな彼の視界に隠すようにして飾られている短冊がちらりと写った。

「ん?何だこんな所に…」

手を伸ばし、手繰り寄せればようやく読めた願い事。


─明日1日、江戸が平和でありますように

「……は、1日?つーかなんで明日……ん?」

そこではたと目を丸くする沖田。裏側にも何か書いてある。ぺらりとそれをこちらに向けると、


─そして沖田さんが非番になりますように。

「……あー…。そういうことですかィ。」


驚いた。まさか自分でも忘れていたその日のことを他のヤツが覚えていたなんて。

明日は俺の誕生日─……。

「ったく、…こんな分かりにきぃところに飾ったらお星さんにも見えねーだろィ、ばーか。」

そんな言葉とは裏腹に沖田はほどけた笑顔を浮かべている。そうして伊織がいるであろう、宴会場へと足を運んだ。

明日はどうやって伊織と共に1日を過ごそうかと思案しながら。

「……ばーか。」

星をえながら

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Happy Birthday 総悟!

7月8日 わらび


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