戦って戦って、ひたすらに強さを求めるあなたにそれを止めてなんて言わない。ただね、もしも疲れたりした時はさ、いつでもおいで。神威の居場所が戦場だと言うのなら私は神威の帰る場所になりたいって、そう思ってるんだから。
『待ってるよ。』
だから、そんな顔で笑ってごめんねなんて言わないで。いつもみたいに下手くそな笑顔で笑ってみせてよ。
伊織はいつだって笑顔で俺におかえりなさい、をくれる。どんなに泥や血で汚れている俺を見ても眉ひとつ歪めることなく。でもそんな綺麗な君だから、なんとなく俺は近づけなかったんだ。汚してしまうのがひどく怖くて。あのね、伊織。俺には帰る場所なんてないんだよ。あるのは戦場という名の俺たちが活きるためにある場所だけ。君は優しいから、きっとそのことを悲しむだろうね。
「ごめんね。」
俺は君を悲しませることしかできない。こうして俺たち夜兎は己のエゴの中滅びてゆくのだろうか。
だけどもし許されるのならば、俺は君に触れたいと思う。そうしたらその体を掻き抱いて、もう二度と離さないと誓うよ。乾いた魂が潤いを求めるように、俺も伊織を求めてやまないのだから。
私はただ神威を待ち続けるよ。たとえその先に私が望むあなたの姿がなかったとしてもかまわない。だってそれが私の意志なんだもの。後悔なんてしないと誓うわ。寂しがりやが温もりを求めるように、私も神威を求めてやまないのだから。
それはもはや本能に近い感覚。求めて求めて、ひたすらに足掻いて、その先に何があるのかなんて分からないけれど。せめてこの想いが届く日が来ればいいと、思う。
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