「『死ね土方コノヤロー』」

屯所内に響き渡る叫び声と爆音。と、同時に吹き飛んだのはその部屋の主。

ではなく、残念ながら襖だけだった。

「ごるあ総悟ォ!あと伊織!毎朝毎朝目覚まし時計のかわりとでも言うように部屋に向かってバズーカぶっ放すなっ!!いつか俺死ぬぞ?!って聞いてる?!」

「チッ、しくじったか。伊織行こーぜィ」

『うん、お腹すいたねえ。早くごはん食べよう!!』

土方が無事だと知るやいなや、土方の言葉には聞く耳をもたずすたこらと食堂に足を運ぶ二人。

「オイ!無視か?!オイ!
はぁ…。総悟はともかくいつの間に伊織まであんなんなっちまったんだ……。」

こうして盛大なため息と共に真選組副局長は今日も朝を迎えた。





あまりにも忙しい日々の中。
……といっても大半は総悟が町でやらかした事の始末書をかたずけるばかりなのだが。

1日に何回も何回も命を狙われれば、そりゃあ疲れるし身がもたない。

しかもなぜか伊織まで総悟と同じようなマネを俺にしかけてくるようになるし、口には出さないが特に最近は本当に…もう本っっっ当にきつい。

「はぁ……何だってんだよ」

もともと伊織は良い部下の鏡のようなやつだった。

腕はたつし、頼りにもなる。
俺のよき相談相手でもあった。
なのに今はアレ、だ。

「…俺、あいつに何かしたか?」

考えてみても何も思いつかない。
…………分からない。

だが俺が今一番分からないのは俺自身のことだった。

人に嫌われるのには慣れてる。
職業柄そういう立場だし、普段仲間にも厳しくあたっているのだから当然だ。

なのに伊織に、あいつに嫌われているのかと思うとチクリと胸が痛む。

「何だってんだ一体……」

だが今は自分のことで悩んでいる暇なんてない。始末書第一だ。

一人そう結論づけて、自分の部屋の襖を勢いよく開けた。


ベシャン!!


「……………。」

『お帰りなさい副長!始末書の作成、わたしも手伝いますよっ』

「…………、オイ。」

『どうしました?』

「コレはなんだ。」

『え?そりゃあ副長の大好きなマヨネーズ(ホールケーキにトッピングバージョン☆)に決まってるじゃないですか。』

「あぁ、そうだな。そうだがマヨネーズ(ホールケーキにトッピングバージョン☆)は人の顔にぶちまけるもんじゃねェェェェ!!」

『うおっと。』

襖を開けた途端に顔にぶん投げられたマヨネーズケーキ。

それに怒り伊織に斬りかかるが、案の定ヒラリとかわされる。

『危ないじゃないですか副長〜。
もしかして怒ってるんですか?』

「あったりまえだろーが!!これで怒らねーやつなんざいねーだろう!!」

『……?おかしいな……確かに総悟が…ゴニョゴニョ……』

「?!」

……は?今こいつ総悟とかなんとか言わなかったか?

「お、おい伊織!!」

『あっ!分かりましたアレですね!ツンデレというやつですね!』

「ちょ、よく分かんねえけど多分ちがう!!多分ちがうからお願い話聞いて?!」

『?』

「あー……、アレだ。今おまえ総悟がなんたらとか言ったよな?あいつが何か言ってたのか?」

『すごい副長!さすがです!
そうなんです。総悟に話聞いて今頑張ってるんですよ!!』

「ま、まさかとは思うが頑張ってるって………何を?」

『副長は超ド級のドMだと聞きまして!!副長に喜んでいただけるように毎日いやがらせを考えては実行してたんです!!』

ニコニコと元気よく答える伊織に俺はしばし唖然となる。

そして長い沈黙のあと、大きくため息をついた。

『う、えぇ?!どうしてため息つくんですかっ』

「ったく総悟の野郎、伊織に変なこと吹き込みやがって……あのよぉ伊織。いっとくけど俺そんなんじゃねぇから。」

『?!で、でもマヨネーズのMはドMのM。すなわちマヨネーズ大好きな副長もドMだと聞いたのですが……。』

「どんなこじつけ方?!つーかツッコミ所ありすぎてもはやどこつっこんでいーのか分かんねえよ!」

『と、ゆーことは今まで私のしてきたことって……』

「…………。」

『ごっ、ごめんなさいぃぃい!』

凄まじい速さでその場で土下座をする伊織に、急いで顔を上げるように言った。

だって彼女は悪くない、と思う。ただ馬鹿みてぇに素直でまっすぐなだけで。

そうして顔を上げた伊織の目には、今にもこぼれ落ちそうな大粒の涙が揺れていた。


「おっ、おい伊織…っ、」

『本当にごめんなさい…!
最近の副長、すごく忙しそうだったから…少しでも喜んで貰えたらと思って…。』

「いや、その気持ちは嬉しいけどよ……つうかもし俺が命狙われて喜ぶような変態だったとしてそれでいいのかお前は?!」

『私はどんな副長でも尊敬してますし大好きです!!!』

「すっ…?!」

『部下として副長を尊敬し、大切に想うのは当然です!!ってどうしたんですか副長、顔まっかっかですよ?』

「……なんでもねぇ。」

『??』

「(総悟の馬鹿には腹がたつが、今回ばかりは見逃すかな…)」

なんてったって、その馬鹿のおかげで自分の気持ちに気づけたようなもんだからな。

「ま、とにかくもう今朝みてぇなことはするなよ。」

『はい副長!!』


今日からは俺がこいつを振り向かせる努力、しねーとな。

ふと笑って頭を撫でてやれば、はにかむ伊織が目に映る。

……そんな俺たちの姿をニヤリと笑って見ていた人物に、とうとう俺は気づくことができなかった。





「いいもん見ちまったぜィ。
ひょっとして土方さん、伊織のことを…、くくっ。

……さーて、今度はどーやって伊織つかって土方いじるかなァ。」





「ん?」

『どうしました?副長』

「………いや。」

なんか今一瞬、寒気がしたんだが……風邪か?

『あ、そういえばケーキ…。』

「ああ?」

『あれ副長の誕生日ケーキだったのにべしゃべしゃになっちゃいました……また作り直しますね!』

「あれ手作りだったのか!」

つうか俺は今日誕生日だったのか!最近忙しすぎてすっかり忘れちまってたぜ。

『はい!次は投げないでちゃんと渡しますね。』

「…………ありがとーよ」


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土方さんはっぴーばーすでい!って全く祝えてねぇ!!←

私が真撰組で夢書くとどーしてもシリアス傾向になっちゃうからそうならないように頑張った結果がこれです。はい。ぐだぐだです。土方さんも夢主も大暴走です。でも祝う気持ちは本物です!!!!土方さん大好きですよっ!

5月5日 わらび



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